風の歌が聞こえますか

僕に聞こえてくる風の歌を綴ります。

2008-01-01から1年間の記事一覧

メールの作法

僕がPCでメールを使うようになったのは1996年頃だからもう10年以上前だ。 この10年間で書いたメールは何百通に及ぶだろうけれど、最近、メールの作法で 意識的に変えたことがある。 それについて書いてみたい。メールを始めたころは「引用符」を多用していた…

ヘンデル「メサイア(ロンドン初演版)」

12月23日サントリーホールでのヘンデルのオラトリオ「メサイア」のリサイタル に行ってきた。演奏はバッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)。 サントリーホールで音楽を聴くのは僕はこれが初めてである。演奏は古楽器を使った思った以上の小編成だったが、BCJら…

MERRY CHRISTMAS!

もうすぐクリスマスですね。 こちらが読者の皆様へのクリスマスカード(Eカード)です。http://www.jacquielawson.com/viewcard.asp?code=1670164924412&source=jl999最初に枝の上のコマドリをクリックしてください。音楽も入っています ^^

三島由紀夫「春の雪」

「春の雪」読了。 大変に読み応えのある小説だった。絢爛豪華で美しい文体で描き出されるのは、主人公を含む貴族階級の生の虚ろさ である。主人公の清顕と聡子の愛もフランス貴族や平安貴族の恋愛を彷彿と させるような「生きるための現実から遠い恋愛」なの…

寺神戸亮「バッハ・無伴奏チェロ組曲」リサイタル

古楽器奏者の寺神戸亮氏がバッハ無伴奏チェロ組曲の2番、4番、6番を弾く コンサートに行ってきた(ノワ・アコルデ音楽アートサロン)。 このコンサートは現代チェロではなくバッハの時代に使われたと考えられる ヴィオロンチェロ・ダ・スッパラという楽器…

停電の夜に

率直に言うと僕は短編小説というジャンルに苦手意識がある。 書き残された余白の中から何かを感じとったり、読後に残るほろ苦さの余韻を 味わったりするよりも、複雑に絡み合った重層的な文脈から得体の知れない巨大 な何かが立ち上がってくるような長編小説…

ハンマースホイ展

10年ほど前、デンマークに出張したことがある。 季節は真冬でこの時の思い出は過去記事「凍りついた海」に書いたのだけれど、 この小さな港町に行く前、僕はコペンハーゲンに滞在していた。 曇り空が様々な明度の鉛色をしていて、それを映し出す海もまた空…

正倉院展

秋晴れの連休の中日、奈良の正倉院展を訪れた。 毎年わずか17日間しか開催されないのに加えて今回は記念の第六十回ということで 例年以上の混雑も予想されたけれど、思い切って出かけた。夕方の空いている時間帯を狙ったので幸いにして30分待ち程度で中に…

仕事なんかにうつつを抜かしている暇はない

先日、僕の会社の偉い人がえらく落ち込んでいたという話が伝わってきた。 この人、もう60歳を遙かに超えているのだが、中学の同窓会に出たところ、他の人 はもうとっくにリタイアしていて貧富の差こそあれ、好きなことを悠々と楽しんで いる人たちばかり。…

わたしを離さないで

英国の作家カズオ・イシグロの「わたしを離さないで」を読み終わった。 読後感は極めて複雑で錯綜したものだ。 これは一級品の小説を読んだときだけに湧き上がる独特の感慨だ。この小説は「ある制約」(実に仰天するような制約!)を受けた人たちの静かな静…

阪神・岡田監督の辞任に思う

プロ野球の阪神タイガースの岡田監督が辞意を固めたとのこと。 僕は当然だろう、と思って受け止めたのだが、報道によれば球団は慰留しているそう で、なおかつ街の人たちは辞めて欲しくない、と言っているようだ。 なるほど。僕は野球をあまり見ないし、特定…

ミュージカル「ミス・サイゴン」

昨日、帝国劇場でミュージカル「ミス・サイゴン」を見た。 僕はミュージカルを見たのは生まれて初めてだったが、これが本当に素晴らしかった。 「これはアメリカ人が作ったオペラなのだな」というのが僕の率直な理解。 実は見る前は、アメリカのミュージカル…

正論を主張する時には

組織の中では、論理的に正しく誰からも非難されないように完璧に仕事をして いれば評価されるというものではない。むしろ「論理的に正しい」ということに こだわり、やたら主張する人は煙たがられ脇に追いやられる傾向がある。 僕はそれはしごく当然だと思う…

様式を超えるもの〜フェルメール展を見て

音楽にしても絵画にしても、掛け値なしに凄いものに接したときには魂が震える。 東京都美術館で開催されている「フェルメール展」はそんな感動を僕に与えて くれた。この展覧会ではフェルメールの作品7点(うち日本で初公開の作品5点)とともに フェルメー…

ミレイの「オフィーリア」を見て

渋谷のBunkamuraのジョン・エヴェレット・ミレイ展を見てきた。 予想以上の素晴らしい作品群に息を飲む思いだった。この展覧会の呼び物はなんと言っても「オフィーリア」である。 あちこちのポスターなどで目にされた方も多いと思うが、今回、実物を目にして…

高貴な死か、卑屈な生か

サリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」の中でアントリーニ先生がホールデン に『未成熟な人間の特徴は、ことにあたって高貴な死を選ぼうとする点にある。 これに反して成熟した人間の特徴は、ことにあたって卑屈な生を選ぼうとする 点にある』と言うシーン…

コロー展

僕にはやっかいな性癖があって、美術館やコンサートに行って「なんとなくこの曲 が好き」とか「この絵、いいよね。僕好み」とかいう楽しみ方ができない。 そういう時は必ず「この曲の何が自分を動かすのか?」とか「この絵から何が響いて くるのだろう?」と…

モディリアーニ展雑感

国立国際美術館で開催されているモディリアーニ展を見に行ってきた。 モディリアーニという画家について、僕はほとんど予備知識がなく「首の長い女 の人の絵を描いた人」程度の認識しかない。だからこそ、これは初めてその絵を じっくり見る、ということでと…

生の豊穣さを感じたい

お盆休みということで自宅に帰ってきている。 今日、Tシャツに半パン姿でかっと日光が照りつける日中にスーパーまで出かけた。 夏空、きつい日光に輝く緑、セミの声。 こういったものが東京にいるより自宅のほうが鮮明に感じられるのはなぜだろう。 あらゆ…

知のエロス 〜 内田 樹先生賛

以前から内田樹先生の本をあれこれ読んでいる。 最近沢山本を出しておられるので、それでもまだ著書の半分ぐらいだろうか。 もっともブログは日々読んでいるので、かなりの量のテクストを日々目にしている と言っていい。内田先生の本は読んでいて楽しい。 …

決断せねばなるまい

僕は決断せねばならない、と思う。 部下の一人の処遇についてである。 前からどうするべきか悩んではいた。 がしかし、ここにきて決めねばならない、と強く感じている。「彼」は素直な性格で真面目でいつも一生懸命である。 しかし、仕事はどうにもうまくい…

中村紘子ピアノリサイタル

中村紘子のピアノリサイタルがあるということで江戸川区総合文化センターへ 行ってきた。実は僕は中村紘子の演奏は音源は持っているがあまり好きではなく、 リサイタルも昔一度行って失望した記憶がある。 それでも行ってみよう、と思ったのは僕が偏愛するブ…

ペンの話

僕は文房具フリーク、というほどではないにしても、文房具には多少の興味がある。 以前書いたように、手帳はモレスキンを愛用しているわけだけど、今日はペンに ついて書いてみたい。まず、普段使いのペンとしては三菱のMITSUBISHI uni-ball PROTECH UB-155…

バッハ・コレギウム・ジャパン「ブランデンブルク協奏曲全曲演奏会」

昨夜ミューザホールのバッハ・コレギウム・ジャパンの演奏会に行ってきた。 曲目はブランデンブルク協奏曲第一番〜第六番の全曲演奏である。 ブランデンブルク協奏曲はバッハがブランデンブルク辺境伯ルートヴィヒ公に 捧げた曲集で、六曲から成るがそれぞれ…

エマールの「フーガの技法」

昨夜、帰宅してTVをつけたらピアノの音が耳に飛び込んできた。 バッハの「フーガの技法」の演奏で、ピアニストは僕の知らない人。 あとで調べたらピエール・ローラン・エマールだった。 確か現代曲の演奏では名前を聞いたことはある。 「フーガの技法」は僕…

「人間の自然状態」は本当か?

アニマルプラネットの「ミーアキャットの世界」がお気に入りでDVDに録画 して見ている。彼らの社会では「優位のメス」がリーダーとして血族グループ を率いる。「優位のメス」と交尾して子孫を残せるのは一番強くて体が大きい 「優位のオス」だけである。…

岡鹿之助展〜ブリヂストン美術館

日本橋のブリヂストン美術館で開催されていた「岡鹿之助展」と常設展示の絵の いくつかを見た感想を書き留めておく。僕は岡鹿之助という画家について全く予備知識がなく、今日始めて見たわけだが、 大変興味深く見ることができた。いくつかの絵(特に風景画…

古楽器の演奏を聴いて

今週は赴任地で週末を過ごしているのだけれど、昨夜急に思い立って今日の 午後、コンサートを聴きに行ってきた。曲目に僕の好きなバッハも含まれていた 古楽器のコンサートだったのだが、残念ながらいまいち、であった。 演奏者も名前の通った人で、楽器もな…

「有能さ」の条件

ゴールデンウィーク。 自宅に帰ってきたが、DVDと読書三昧に毎日である。 特に「バンド・オブ・ブラザース」の原作のほうを読み、DVDも数話分見た。 この作品についてはいずれ感想を書くが、登場人物の次のフレーズにインスパイア される所があり、以…

書生とオトナ

司馬遼太郎の「翔ぶが如く」を読み返していて面白いフレーズに行き当たった。 木戸孝允と西郷隆盛についての記述である。【引用始まり】 --- 木戸は、あくまで書生気質を維持している。 このあたりが滑稽で、木戸は本来の性格からいえば非書生的であり、うま…