風の歌が聞こえますか

僕に聞こえてくる風の歌を綴ります。

仕事なんかにうつつを抜かしている暇はない

先日、僕の会社の偉い人がえらく落ち込んでいたという話が伝わってきた。
この人、もう60歳を遙かに超えているのだが、中学の同窓会に出たところ、他の人
はもうとっくにリタイアしていて貧富の差こそあれ、好きなことを悠々と楽しんで
いる人たちばかり。そういう人たちに「いつまで眉根にしわを寄せて仕事してるんだ」
とか「人生の残り時間は短いぞ」などと言われショックを受けたらしい。
なるほど。
また、最近、ある方から『仕事なんかにうつつを抜かしている暇はない』という言葉
を聞いた。これも恐らくは「人生の残り時間は短いぞ」に通じる言葉なのだろう。
至言である。

「いい歳をして眉根にしわを寄せて仕事をせざるを得ない」というのは「自分のペー
スで仕事が出来ない環境にある」ということで翻って言えば「他者の分まで責任を負
わされている・負っている」という状況が一般的だろう。そういう状況はビジネス書
のあれこれに書いてある通り「やりがい」と捉えるべきかもしれないし、社会貢献に
つながるのかもしれないし、お金をより沢山貰える可能性を開くことであったり、
人から偉いと見なされる「記号」を身につけることができる可能性を増す、という
ことでもあるだろう。
しかしながら、個人の嗜好として、金銭や権力や他者からの承認への欲望が比較的
薄い人にとっては「いい歳をして眉根にしわを寄せて仕事をせざるを得ない」状況と
いうのは、率直言ってあまり割が良くないのではないか。
それに対する見返りのうち、お金、地位、特権などに執着が薄いと「やりがい」や
「社会貢献」がどれぐらいできるかに比重がうんと重くなるわけで、自分で手を動か
して何をする職人さんなどに比べて「人を使う仕事」の場合、そこのところがなかなか
シンプルでないように僕は思う。

さて、話は変わるが、僕も単身赴任を始めてからいろいろなことに目覚めたように
思う。コンサートも以前よりよく行くようになったし、絵を観る楽しみにも目覚めた。
ミュージカルだって生まれて初めて行ってうんと楽しめたし、出張の時には極力美味
しいものを食べるようにしている。寺社仏閣や仏像にも興味が出てきたし、お能
歌舞伎も見てみたい。相変わらず読みたい本もどっさりあるし、見たい映画だって
いろいろ出てきた。行ってみたい場所だってあれこれ出てきた。
ここ半年で仕事以外に「楽しみ」がずいぶん膨らんできたように思うのだ。

僕の場合はまだまだ定年まであるので、まだ当分仕事中心の人生を送らないといけ
ないわけだけど、楽しみのほうも忘れないように、さらに膨らませるようにしたい。
これからは体力が落ちてくることだって、考えに入れないといけないだろう。
○○に行きたい、と思っても行けるようになった時には体力切れで難しくなっている
ことだってあり得る。
だから、ここからはバランスを見ながら「やりたいことは今のうちにやっておく」
ようにしないと駄目なんだろう。

僕のやっておきたい究極の目標は「ヨーロッパ芸術の旅」。
ヨーロッパは出張で散々行った土地だけれど、あの頃、僕は絵を観る楽しみを知らな
かった。ルーブルにもアムステルダム国立美術館にもメトロポリタンにも行きながら
ロクに絵を記憶していないのだ。だから死ぬまでにぜひ、フランス、オランダ、ドイ
ツ、イタリアなどを巡る「美術と音楽を満喫する旅行」に行きたい。
それから、京都と奈良。
これは国内だからもうちょっと後に取っておく。
もちろん、ゆっくり巡る前にはうんと勉強して予備知識を蓄えた上でのことだ。

もちろん東京にいる間に行きたい場所もいっぱいある。
それをこれから一つずつ、行くようにしなくては。
なにしろ人生の残り時間はもうそんなには長くないのである。