風の歌が聞こえますか

僕に聞こえてくる風の歌を綴ります。

2012-01-01から1年間の記事一覧

海炭市叙景

佐藤泰志「海炭市叙景」を読了。 久しぶりに良い短編小説を読んだ、という読後感だ。 この人の小説を読んだのは初めてだけれど、素晴らしい。 この物語では架空の「海炭市」(北海道の函館市がモデルらしい)を舞台に、市井の 人々のひっそりした生活と人生…

熟成できない焦り

最近は仕事に追われている。 いや、時間的に追われているということではない。 出張こそ多いけれど、そうでない時は大体、7時前にはオフィスを離れ8時前には帰宅 しているのだから、決して肉体的に多忙というわけではない。 精神的に追われている、というこ…

負けて勝つ〜戦後を創った男・吉田茂〜

今、NHKでやっている土曜スペシャルドラマの「負けて、勝つ」を見ている。 戦後の宰相・吉田茂を描いたものだ。相当にフィクションも入っているよう だけれども、面白く引き込まれて見ている。昨夜の回は印象深かった。 独立(講和)を目指す中、朝鮮戦争が…

加藤周一「私にとっての20世紀」

加藤周一の「私にとっての20世紀」を読了した。 いくつか大変印象に残った部分があり、僕自身の思考のテーマとも被るので抜き書き しておく。 20世紀の思想家としてのサルトルが伝統的な哲学の最後の人だと言っても、 彼の出した問題は、ずっと続くと思いま…

最後の親鸞

以前の記事で紹介した吉本隆明の語った以下の言葉が頭から離れない。 しかし親鸞は「人間には往(い)きと還(かえ)りがある」と言っています。 「往き」の時には、道ばたに病気や貧乏で困っている人がいても、自分の なすべきことをするために歩みを進めれ…

火星のプリンセス

先日の欧州出張の帰りの機内で映画を物色していたら「ジョン・カーター」が目に とまった。ディズニーが110周年記念に予算を投入して作った映画ということだが、 原作はスペース・オペラの古典「火星のプリンセス」とのこと。 エドガー・ライス・バロウズの…

スウェーデンの湖で鱒釣り

北欧4カ国のうちでトランジットは別として一度も訪れたことのない国、スウェーデン を出張で訪れた。噂に違わぬ美しい国である。その中でも今回、取引先のセッティング で森の奥深くにある湖でルアーを使った鱒釣りをした。 ルアー釣りそのものが僕には初め…

「セザンヌ - パリとプロヴァンス -」(国立新美術館)を見て

今回のセザンヌ展は「僕のような初心者には難しかった」というのが率直な印象だ。 いったいどこが難しかったのか? セザンヌは僕にとってミステリアスな画家である。 美術初心者の僕だが、今まで見たいろいろな画家の中で、セザンヌはとても言語化 しにくい…

「エウレカ!」という蜜

最近ずっと自分はしかめっ面でいるように思えてならない。 多分、実際そうだと思う。 周囲の人間はさぞ、うざったく思っていることだろう。 何が自分をそうさせているのか。 いろいろな理由はあるけれど、焦燥感がそのひとつにある。 いろいろな焦燥感。 例…

インテリ

僕はつまりのところ「インテリ」なんだな、と改めて自覚した。 「インテリ」とは、つまりは「観念的」ということで、自分の中の「観念」と 「実存」が遊離していて、実存部分と観念部分の葛藤に「苦しむ」というのが その特徴だ。そんなものを遊離させなけれ…

公ホリック

「おおやけホリック」と読む。 僕の造語だ。 男の多くは、この「公ホリック(=公中毒)」に罹っている。 反対の女性の多くは「私ホリック(とりわけ恋愛ホリック)」に罹っている。 とはいうものの、どちらのホリックのどちらが具合が悪い、というものでも…

ブリジストン美術館とフェルメールセンター・銀座

日曜日なのに早めに家を出て東京に向かった。 見たいアートイベントが二つあったからだ。 ひとつはブリジストン美術館で開催されている 「パリへ渡った石橋コレクション 1962年、春」、 もうひとつは期間限定のフェルメールセンター・銀座で開催されている …

同音連打についての雑想(1)

自宅の楽譜棚を漁っているとスカルラッティのニ長調のソナタK.435の楽譜が 出てきた。昔、ちょっとだけ譜読みをしてちゃんと弾かずに放り出していた ものだ。久しぶりにピアノで触ってみているうちに記憶が蘇ってきた。 この曲を始めて耳にしたのは15年ぐら…

ホルヘ・ルイス・ボルヘス「伝奇集」

仕事漬けの日々の中でも激流に抗うように少しずつ、少しずつ読んでいる 本がある。それがボルヘスの「伝奇集」。短編集なのだけれども、どの 作品も、独特の幻想と不思議さに彩られた不思議な味わいの短編ばかりだ。 中でも「円環の廃墟」は読んでいるうちに…

「海辺のカフカ」を読んで

海辺のカフカ (上) (新潮文庫)作者: 村上春樹出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2005/03/01メディア: 文庫購入: 21人 クリック: 1,037回この商品を含むブログ (961件) を見るシカゴ出張の間、村上春樹の「海辺のカフカ」をずっと読み続けていた。 読み終わるの…

ひとは一生にひとつのことしか出来ないものだ

2011年が終わり2012年が明けた正月早々、オウム真理教の平田容疑者が自首したという ニュースを読むことになった。実に17年の逃亡生活の末の出頭だった由。 17年間、身を隠し逃げ続けるのはどんな心持ちの日々だったのだろうか。 しかしながら、平田容疑者の…