本
久しぶりに衝撃的な小説を読んだ。 トルストイの「イワン・イリッチの死」である。主人公のイワン・イリッチは裁判官。持ち前の頭脳と如才なさで とんとんと出世を遂げた人物で、結婚生活はうまく行っていない ものの(イワン・イリッチは口うるさい妻から逃…
ひとりの読者として本当に嬉しいニュースだった。 彼の小説についてはこのブログでも何回か取り上げたが、このように 静謐でリリックでありながら深い内容の小説が正当に評価されたこと を本当に嬉しく思う。 おめでとうございます!
高坂正堯「文明が衰亡するとき」読了。 この本の洞察の深さ、広さには恐れ入った。さすがは名著である。 本当に30年以上前に書かれた本なんだろうか。。 備忘のために一部抜書。 現在の世界において国民国家がもっとも基本的な運営単位であることも 現実であ…
このミンツバーグの本は400ページを超える大著だが、名高い本だけあって 感銘を受けることしきり。単なるリーダーシップ論、マネジメント論とは違い、 実際のマネージャー29名を密着観察してデータを取り、そこからモデル理論を 構築しようとする姿勢がすご…
エマニュエル・トッドの「グローバリズム以後 アメリカ帝国の失墜と日本の 運命」を読んだ。僕にとってもっとも大きな気づきは、フランスの人権宣言に端を発しアメリカ が主導してきた自由民主主義の精神(自由、平等、同胞愛)に基づくグロー バル自由主義…
7月初旬に出張でタイに行き4日間を過ごす。 仕事のミーティング、行事がすし詰めだけれども、せめて三島由紀夫が 「暁の寺」で描いたワット・アルンだけでも見てみたい。 以下、「暁の寺」から抜粋: 本多はきのうの朝早く、舟を雇って対岸へゆき、暁の寺…
ジュリオ・トノーニ「意識はいつ生まれるのか」読了。 この本は僕にとって本当に衝撃的、かつ、決定的な一冊だった。人間の意識が いかにして生まれるか、を「統合情報理論」という仮説を元に実験を積み上げて 立証した過程を丁寧に読みやすく説明した本なの…
物理学者の故・戸塚洋二氏の著書「がんと闘った科学者の記録」を読んで いろいろ考えさせられるところは多かった(特に来るべき死にどう向き合い 精神を保ってゆくか、であったり、がん患者が何を知りたいと思っているか といったこと、それから、それにも関…
「進撃の巨人」は不思議な漫画で、何度も読み返してしまう。 昨夜、会社の若手社員男女数名をご馳走したのだが、そこでもこの作品が 話題になり、某総合職女子は「巨人との戦いというより人間を描いている 漫画なんですよね」と言っていた。 そこでふと、僕…
「進撃の巨人」にハマってしまった。 先日から今までに出ている単行本16冊をあっという間に読破。 コミックにハマったのは「北斗の拳」以来ではないだろうか。巷で言われているように、この作者は実に絵が下手である。 第1巻を読みだした頃、登場人物の描…
ここ1年ほど、死んだら自分の意識はどうなるのか知りたいという思い にかられ、臨死体験、死後の世界、脳科学の本をあれこれと読んできた。 死ぬと僕の魂だけは別の世界(死後の世界)に飛んでゆくのか? それとも何もない無になるだけなのか?死ぬと今生の…
第六話はこの本のタイトルに対応する「表題作」として書いた、と村上自身が 語っている「女のいない男たち」。 これは率直に言って軽い作品だ。 この短篇集がひとつの曲集だとすれば、聴かせどころがすべて終わったあとで しめくくりに置かれた小品のような…
第五話「木野」。 村上自身が「これは僕にとっては仕上げるのがとてもむずかしい小説だった。 何度も何度も細かく書き直した。ほかのものはだいたいすらすらと書けたの だけれど」と語っている通り、一番の力作であることは確かだ。 僕にとって一番好きな作…
第四話の「シェエラザード」。 この物語の空気感はとても不思議で、僕はこの物語が今回の短篇集で 一番好きだ。何らかの理由で「ハウス」に身を隠すことになった「羽原」のもとに 女が週2回のペースでやってくる。彼女はスーパーで食品を買って 持参すると…
今日は第三話の「独立器官」 52歳の独身医師の渡会は、結婚して家庭を持つことは望まず、女性たちと 軽い関係を持ち続けることをモットーとして生きていた。ミラン・クンデラの 「存在の耐えられない軽さ」の主人公トマーシュ医師と通じるもののある キャ…
前回の続きで「女のいない男たち」の感想を書いてゆく。 今日は第二話「イエスタデイ」だが、この話が僕には一番軽く読めた。 関東生まれで関東育ちにも関わらず完璧な関西弁を話す「木樽」とその美しい ガールフレンドである「えりか」と「僕」の20歳の時…
村上春樹の新作は短篇集ということであまり期待せずこの本を買った。 「1Q84」の時とは違って書店では平積みにされていて、いともたやすく 手に入った。村上春樹は長編こそが素晴らしい作家、と僕は認識しているし、本人も そのように思っているようだ。…
ネットなどで評判が高い新人作家・松家仁之氏の小説「火山のふもとで」を読了した。 美しく格調高い文章、静謐さと上品さを醸し出す文体、穏やかに、そしてなめらかに 流れてゆく物語。 実に素晴らしい小説だった。 日記帳でも引用したアマゾンの紹介文を下…
佐藤泰志「海炭市叙景」を読了。 久しぶりに良い短編小説を読んだ、という読後感だ。 この人の小説を読んだのは初めてだけれど、素晴らしい。 この物語では架空の「海炭市」(北海道の函館市がモデルらしい)を舞台に、市井の 人々のひっそりした生活と人生…
以前の記事で紹介した吉本隆明の語った以下の言葉が頭から離れない。 しかし親鸞は「人間には往(い)きと還(かえ)りがある」と言っています。 「往き」の時には、道ばたに病気や貧乏で困っている人がいても、自分の なすべきことをするために歩みを進めれ…
先日の欧州出張の帰りの機内で映画を物色していたら「ジョン・カーター」が目に とまった。ディズニーが110周年記念に予算を投入して作った映画ということだが、 原作はスペース・オペラの古典「火星のプリンセス」とのこと。 エドガー・ライス・バロウズの…
仕事漬けの日々の中でも激流に抗うように少しずつ、少しずつ読んでいる 本がある。それがボルヘスの「伝奇集」。短編集なのだけれども、どの 作品も、独特の幻想と不思議さに彩られた不思議な味わいの短編ばかりだ。 中でも「円環の廃墟」は読んでいるうちに…
海辺のカフカ (上) (新潮文庫)作者: 村上春樹出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2005/03/01メディア: 文庫購入: 21人 クリック: 1,037回この商品を含むブログ (961件) を見るシカゴ出張の間、村上春樹の「海辺のカフカ」をずっと読み続けていた。 読み終わるの…
仕事本の読書に追われて、楽しみの読書に割く時間がないことが哀しい。 そんな中でも、つまみ食い的に読んだものがいくつか。 梅棹忠夫「夜はまだ明けぬか」 急に失明したとき、人はどういう心理状態になるのか、そこから立ち直ってゆく過程に 興味があって…
たった実質100ページの本なのに、読みかけでなかなか進まずやっと読了。 読了してみると、実に感動的かつ素晴らしい本だった。 マックス・ヴェーバーは「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」を 読んだときも感動したが、この本もまた素晴らしい。 …
第79代内閣総理大臣であった細川護煕氏の在任中の日記である。 最近檄忙で仕事以外の本を読む暇がほとんどないのだが、どうしても読みたいと 思い、購入して昨夜から読んでいる。500ページ以上の大部の本なので、まだ半分 程度しか読んでいないが大変面白い…
教養と雑学の違いについて内田先生の定義ほどわかりやすく的確なものはない、と 思う。以下、引用。 【引用始まり】 --- 教養は情報ではない。 教養とはかたちのある情報単位の集積のことではなく、カテゴリーもクラスも 重要度もまったく異にする情報単位の…
ドストエフスキー「白痴」を読了した。 いつもながらドストエフスキーの小説を読むと、呆然とした気持ちと満腹感と複雑な 感想で頭がいっぱいになる。 いつもそうだけれど、ドストエフスキーの小説は感想を書くのが非常に難しい。 筋立ては単純。 あまりに善…
昨日、日記帳のほうで取り上げた「考える人」に掲載された村上春樹のロングインタ ビューを読了したので、特に心に残った部分を備忘録として抜き書きしておく。 【引用始まり】 --- 『ノルウェイの森』はもともと250枚ぐらいの、さらりとした小説にする …
鳩山氏が辞任し菅直人氏が新総理となった。 メディアは皆、鳩山は馬鹿だった、無能だった、と罵っているが、どうなのだろうか? 僕が思うに、政治家としてバランス感覚に少々問題はあったものの、そこまで罵倒される べき総理大臣だったとは思っていない。政…