グローバル自由主義の終焉
エマニュエル・トッドの「グローバリズム以後 アメリカ帝国の失墜と日本の
運命」を読んだ。
僕にとってもっとも大きな気づきは、フランスの人権宣言に端を発しアメリカ
が主導してきた自由民主主義の精神(自由、平等、同胞愛)に基づくグロー
バル自由主義の思想(多民族であっても、異なった宗教を信じているとしても
人間はお互い尊重しあって理解できるし、そうであるべき)が「楽観的イデオ
ロギー」であり、共産主義が前提とした人間像(人間は社会的な結果平等な分配
で満足する、とか、私的利潤の追求を求めない、とか)同様に、人間の本性に
背を向けた一種無理がある理想主義的な考えであったのではないか、という残酷
な問題提起だった。
ひょっとしたらこのような理想主義的思想は「歴史的・地政学的に見たときに
人類史のエピソード(一時的な偏見)に過ぎなかった」と後世で語られること
になるのかもしれない。
いや、僕も理想としてはステキな正しい理想的な人間像だ、と今でも思う。
共産主義・社会主義の「理想的人間像」もまた「美しく正しかった」ように。
しかし現実の人間は、そんな「理想的人間像」ではないのだ。
人は、差別し、蔑視し、いがみ合い、責任をなすりあい、ひとより少しでも
多くの富と権力を得たくて、誰かを踏みつけにしたい、という気持ちも持って
いる存在であって、それを理性でコントロールできる存在ではないのだ、という
こと。
我々の社会はこの残酷な事実をベースにしてしか構築できないことを改めて
知らしめられた気がする。これからの世界は保護主義的で、多民族に対して
差別的で移民を徐々に排斥するような時代が訪れることになるのではないか。
グローバリズム以後 アメリカ帝国の失墜と日本の運命 (朝日新書)
- 作者: エマニュエル・トッド
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2016/10/13
- メディア: 新書
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