風の歌が聞こえますか

僕に聞こえてくる風の歌を綴ります。

同音連打についての雑想(1)

自宅の楽譜棚を漁っているとスカルラッティニ長調ソナタK.435の楽譜が
出てきた。昔、ちょっとだけ譜読みをしてちゃんと弾かずに放り出していた
ものだ。久しぶりにピアノで触ってみているうちに記憶が蘇ってきた。
この曲を始めて耳にしたのは15年ぐらい前。
ロシアの巨匠ニキタ・マガロフが来日して東京のリサイタルで弾いたのを
テレビ放送で聴いたのだ。
どんな曲かというとこんな曲である。
(生憎、ピアノで演奏したYouTubeがなかったのでこの動画はチェンバロ演奏で
 あるが。。)

スカルラッティ ソナタニ長調K.435
チェンバロ演奏:スコット・ロス

スカルラッティスペイン王室お抱えの音楽家で生涯に555曲のソナタを書いた。
そのどの曲もチェンバロのためのもので、同音連打が多いこともその特徴のひとつ。
例えば、このト長調ソナタなどもそうだ。

スカルラッティ ソナタト長調K.455
(ピアノ演奏:ユジャ・ワン

同音連打はピアノの基本的なテクニックの一つで、普通に習っていくと学習者の多くが
大嫌いなツェルニー練習曲で必ず練習させられる。
これは僕もレッスンでやったツェルニー50番の35番の練習曲。

速い同音連打を行うには、ピアニストのアスリート的素養(反射神経、運動神経)と
訓練はもちろん必要だが、それに加えてピアノのアクション機構のシビアな調整が
必要となる。
さて、スカルラッティの曲の同音連打はいろいろあれど、とにかくこれは凄い!と思う
のが、このアルゲリッチの演奏だ。
これは人間業を超えている。
それでいて詩情が失われていないのはすごい。

スカルラッティ ソナタニ長調K.141
(ピアノ演奏:マルタ・アルゲリッチ

ところで、ニキタ・マガロフの演奏はどうだったろう?
記憶は定かではないけれど、それほどのスピードではなかったような気がする。
そのかわり、風格というか巨匠風味はたっぷりと感じられた。
僕もひとつ、味のあるK.435を弾けるよう練習してみるか。