風の歌が聞こえますか

僕に聞こえてくる風の歌を綴ります。

久しぶりにショパンを聴いて思うこと

単身赴任生活を始めて二回目の週末。
相変わらず家事に忙殺されてはいるけれども、少しずつ余裕も出てきている。
赴任前から取り組んでいるテープ音源のMP3化を今日は進めることにした。
今日選んだテープはたまたまショパンピアノ曲のもの2本。
ディヌ・リパッティの弾いたワルツ14曲と舟歌マズルカを入れたものと
フー・ツォンが弾いたノクターン10曲が入ったもの。
ショパンの音楽を聴くのは本当に何年ぶりだろうか。
久しぶりである。

ピアノ音楽好きとして僕もご多分に漏れず、昔は熱心にショパンを聴いたもの
だった。特にバラード、スケルツォソナタなど。
しかし、ある時期から興味を持てなくなって聴かなくなり、ベートーヴェン
シューベルトブラームスやバッハの音楽に僕の関心の中心は移っていった。
それが久しぶりに今日、ショパンの音楽を、それも昔あまり興味がなかった
(と言っていい)ワルツとノクターンを聴いて「いいなぁ」と思った。

ショパンについて言えばワルツもノクターンも(言い方は悪いかもしれないが)
率直に言えば、深みのない無害なサロン音楽の典型である。
音楽にある種の「深刻さと神聖さ」を求める傾向のあった僕はその「サロン臭」
がある時期から気になり始めたことは否定できない。それとともに「ロマン
主義臭さ」にも閉口していた。
たぶん、その時期の僕は「ロマン主義的な事柄」すべてを否定したい気分になって
いたのだろう。
もちろん、年齢を重ねたことも無縁ではないのだろうが。

今の僕は、恐らく以前よりももっと柔軟で人生の中の「ロマン主義」は必要な
構成物であるという公平な見方ができるようになっている。
だからショパンを聴いても以前のような違和感を感じないのではないか。

演奏が良かったことも幸いした。
フー・ツォンの情熱的なノクターン(これはロマン主義というより演歌と言った
ほうが良いだろうか、笑)と気品にあふれたリパッティのワルツ。
特に、ディヌ・リパッティの演奏は素晴らしい。
演奏からこれほどに清潔な気韻の高さが香り立つのはいったい何故なのだろうか。
リパッティのバッハ・モーツァルトを改めて聴きなおしたくなった次第。

Icon: Dinu Lipatti

Icon: Dinu Lipatti