風の歌が聞こえますか

僕に聞こえてくる風の歌を綴ります。

決断せねばなるまい

僕は決断せねばならない、と思う。
部下の一人の処遇についてである。
前からどうするべきか悩んではいた。
がしかし、ここにきて決めねばならない、と強く感じている。

「彼」は素直な性格で真面目でいつも一生懸命である。
しかし、仕事はどうにもうまくいかない。
僕は転勤後、「彼」を特に気に掛け、教育にも力を費やしてきた。
しかし、一緒に仕事をし、教育をし、雑談をし、時間をともに過ごすうちに
否応なく認識せざるをえないことになった。
彼の問題は「性格」にはないこと。
問題は「ハードウェア」と「OS」にあること。

「ハードウェア」はいわゆる「地頭」の力である。
パソコンで言えば、CPUのクロック数でありメモリの容量でありハードディスクの
容量でもあり、こういったごく基本的ないわゆる「脳の性能」に問題がある。
もう一つ、「OS」の問題。
これは言い換えれば人間としての「基本的な常識」の部分。
例えば、人の心を読む、とか周囲の雰囲気を察する、とか、物事の優先順位に
そって仕事をする、とかそういうごくごく基本的な部分。これはハードウェアとは
違って、少年時代からしつけをされる課程で形成される部分が大きいだろう。
彼はこの二つの部分に大きな問題がある。
「大きな問題」と言っても普通の社会人としてやっていけない、というレベル
ではないけれども、僕の部署で仕事を続けるには残念ながら水準に達していない、
と言わざるを得ない。

人は「教育」によってある程度変えてゆくことができる。
特に「彼」のように素直さと前向きな性格があれば効果はあるはずだと思う。
「考え方」とか「進め方」など、いわゆる「ソフトウェア」の部分については粘り
強くやれば教育によって改善することはできるだろう。
しかし「OS」の部分となると難しく「ハードウェア」においては不可能と言って
いいだろう。

人事評価の場で彼には「君の能力は我々の要求水準に達していない。よって今後
は、君よりずっと年下の後輩がやっているよりも易しい仕事を中心にやってもら
おうと思うただし、これは「終わり」ではなくて、その水準の仕事を十分満足
できるレベルでこなせるようになったら次のレベルに挑んで貰おうと思う。」
という話をし納得して貰うしかないだろう。
「チームのそれぞれの人にはそれぞれの役割がある。君には今の君のレベルに
合った形でチームの中で活躍して貰いたい」ということなのだが、納得して貰える
だろうか。
納得してもらう以外、僕の部署には彼の居場所はない、ということだ。
そういう言葉を言う辛さ以上に、そういう言葉を言われた彼の心の痛みを想像する
と、僕は本当にいたたまれない思いである。

辛いことではあるが、僕は決断せねばなるまい。