風の歌が聞こえますか

僕に聞こえてくる風の歌を綴ります。

岡鹿之助展〜ブリヂストン美術館

日本橋ブリヂストン美術館で開催されていた「岡鹿之助展」と常設展示の絵の
いくつかを見た感想を書き留めておく。

僕は岡鹿之助という画家について全く予備知識がなく、今日始めて見たわけだが、
大変興味深く見ることができた。いくつかの絵(特に風景画)を見て「この人の
絵は古典音楽に似ている」と直感した。これは直感なのだけれども、その意味を
言語化してみるとつまりは「はっきりした構成・構造を持っている」ということ
そしてさらには「感情・勢いに流されたところがほとんど感じられない」という
ことになるのかもしれない。
特に、色、形を画面の中に『置いている』という感覚をとても強く受けるのだ。
ある色のある物体(建物や木や柱や、そういったもの)はその必然があってその
位置にその量感でもってきちんと配置されている。
もちろんどんな画家でもそれ相応に物体の構成や色の配置にはその画家なりの
必然があって配置をしているのだろうけれども、岡鹿之助のそれには感興に
流されて、とか筆の勢いで、といった風情が感じられない。
結果としてその画面からは、動的な力というよりは静謐が伝わってくる。
技法では画面を詳しく見ると絵によっては木の枝や建物のエッジに沿って背景
よりも明るい絵の具で細いラインを描き込んでいるものがあっておもしろいと
思った。この技法は画像処理でその物体を強調し浮き上がらせるための技法と
同じだ。
僕が特に気に入った絵は「セーヌ河畔」
色彩が明るくアンリ・ルソーの絵を想起させる。

常設展も続いて見た。
モネの「睡蓮」。モネの「睡蓮」はこれまでもいくつかの美術館で見たことが
あるけれども、今回は人も少なくじっくり近づいて見ることができた。
僕が引きつけられたのは睡蓮の部分よりもむしろ水の部分で、その使われている
微妙な色彩が圧倒的に豊富かつ微妙で圧倒された。
マネの「自画像」。いわゆる印象派らしい、というべきなのだろうか。
荒々しいタッチで描かれた自画像は細密で写実的な描写ではないのだが、それで
いて圧倒的にリアルな一人の人物が量感を持って立ち上がってくる。
素晴らしい、と思った。
セザンヌの「サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワー」
率直に言って僕にはセザンヌの素晴らしさがまだよくわからない。
ただならない絵、というたたずまいは確かに伝わってくるのだが。
もっとセザンヌの絵を見てみたいものだ。
ルノワール「すわるジョルジェット・シャルパンティエ嬢」
この美術館の看板ともいえる作品なのだが、これもまた僕には良さがわからない。
肌色や服のところに現実にはあり得ないような色を置いていることや、瞳の光点
が単純な点で描かれていない点などおもしろくは思ったのだが。
ルノワールは「すわる水浴の女」もあったのだがやはり良さがわからなかった。

そのほかにもいろいろな絵を見ていろんなことを感じたけれども、最後に常設展で
圧倒的に好きになった三つの絵を挙げておく。
ピカソの「ブルゴーニュのマール瓶、グラス、新聞紙」
カンディンスキー「二本の線」
パウル・クレー「島」
この三つの絵は僕が大富豪だったら即金で買いたいほど気に入った。
どれも本当に素晴らしい絵だと思う。
一目惚れである。

ブリヂストン美術館
(上記HPから上に挙げた作品の画像が検索できます)