風の歌が聞こえますか

僕に聞こえてくる風の歌を綴ります。

ヴァンドーム広場

ヴァンドーム広場」を観た。
カトリーヌ・ドヌーヴ主演の1998年のフランス映画。マリアンヌ(ドヌーヴ)は
自殺した宝石商の妻。そこに現れたのが、かつて愛したこともあるが、裏切った
上に自分を捨てた男。マリアンヌは過去を清算するためにもまた男と会う決心を
するが、、、というストーリー。

ストーリーも映画の出来も、どうということはない。
この映画を成立させているのはドヌーヴの魅力、これにつきると思った。
ドヌーヴはこの撮影時、55歳だったというが、本当に素晴らしい。成熟した
女性の魅力を感じさせてくれる。ほとんど無表情に見える中でのわずかな表情の
変化で、驚くほどの感情の”裏の”動きを伝えてくる。
僕は他の映画は知らないが、やはり名女優なのだろう。

特に印象に残ったシーン。マリアンヌに密かに心惹かれている男から、昔の男の
今の話を聞く。動揺したマリアンヌは、過去を振り払うようにその男と一夜を
共にする。翌朝、ベルギーに向かう列車のなかで若い男たちと賭ポーカーをする
マリアンヌ。追ってきた男に向かって「一度寝たぐらいでいい気にならないで」
と啖呵を切るシーン。この時のいろいろな感情を押し殺した、誇り高く複雑で、
意地悪く、すさんだ、そして疲れた表情。
これが素晴らしかった。

映画サイトの感想を読むと「あの美しかったドヌーヴの歳を取った姿を見たく
なかった」という感想がけっこうある。そうなのだろうか。
僕にはこの映画のドヌーヴはとても魅力的に見えたのだが。

ヴァンドーム広場

ヴァンドーム広場