風の歌が聞こえますか

僕に聞こえてくる風の歌を綴ります。

「動乱」を見て

アマゾンのプライム会員なので無料でいろいろ映画がダウンロードできる。
今回、飛行機の中で見るためにダウンロードしていた1980年制作の映画「動乱」
を機中で見た。この映画を見るのは二度目だけれど感じるところがあったので
感想を記したい。

この映画はフィクションであるが二・二六事件をモデルにしている。登場人物
の名前は全部変えられているけれども、高倉健が演ずる宮城大尉が首謀者の一人
の安藤大尉である。もっとも、この映画の作りはごく荒っぽく歴史映画ではなく
高倉健吉永小百合のメロドラマであることは論をまたない。
高倉健吉永小百合も双方ともどんな映画に出ても高倉健高倉健吉永小百合
吉永小百合、でしかないという点で名優と呼べるかどうかは疑わしいが、カッ
コよさと美しさ、そして可憐さの面で超スーパースターであることは間違いない。
特にこの映画の吉永小百合の可憐さ、美しさは神々しくも素晴らしく、サユリスト
の人がこの映画が吉永小百合の美しさの面でのベスト映画、というのも頷ける。

話が横道に逸れた。
この映画を自然に見てゆくと二・二六事件を起こした首謀者たちに同情し、無理も
ない、と思えるようになってくる。国民は窮乏に苦しみ、農家は娘を売り、首を
吊っている中で、政財界や軍上層部は肥え太り贅沢三昧を楽しんでいる。
これ以上、国民の窮乏を見ていられない、という正義の志士たちが「昭和維新」を
起こそうとして立ち上がった事件、として描かれている。
いや、描かれている、というよりも、事実、二・二六事件はそのようにして発生
したものであるのだが、結果的には軍事テロであった、ということである。

二・二六事件の首謀者たちは直情径行で人情に厚い正義感たちであり、動機は
極めて純粋なものだったことは確かだ(これは二・二六事件首謀者たちの手記
などを読んでもわかる)。
おそらく同様に、今世界各国でテロを起こしているイスラム過激派たちもきっと
そういう人々なのだろうな、と僕は想像する。行き過ぎた腐敗、行き過ぎた格差、
行き過ぎた窮乏、宗教的無理解などが臨界点を超えた時、真面目で純粋で正義
感に駆り立てられた人々がテロを起こすのであって、決して残虐非道な悪党が
行っているのではないように思う。それはその「動機」において(この映画の
ように)理解できなくはないし、もっともだ、と思われる部分があるに違いない。
だからと言って、もちろんテロが許されるわけでは決してない。
なので社会の側から言えば、上述したような耐え難い不条理がある臨界点を超え
そうな時に、それを現実的に変える手立てが何ひとつない、という状況を作ら
ないような仕組みを設けておかないといけない、ということだ。
いや、もっと言えば、そこにいる人々が「この仕組みがあれば現実を変えること
ができるかもしれない」と「信じられる仕組み」が必要、ということなのだろう
と思う。

そういう仕組みの組み込みは、一面では社会の効率性や統一性を阻害することに
なるのだろう。おそらくテロが多発している国家ではそのような仕組みの組み
込みが上手く行っていないのだろうし、世界全体で言えば、イスラム過激派の
人たちには、そのように信じられる仕組みがこの世界にない、もう暴力しか
ない、と感じられているに違いない。しかしながら、ではISの人たちの「世界
はこうであるべき」という考えが、世界の全ての人々にとって良いものか、と
言えば、NOと言わざるをえないのだ。
これは実に難しく厄介な問題なのだ、と改めて思う。

もう少し何か言いたいことがあるのだけど、これ以上今は考えがまとまらない。
とりあえず今日はここまでで筆を置く。

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