風の歌が聞こえますか

僕に聞こえてくる風の歌を綴ります。

新潟・十日町へ

上越新幹線に乗り、仕事で日帰りで新潟県十日町へ。
東京からおよそ2時間半の道のりである。
出張だったのだけれど、なんだか日帰り旅行のような楽しさのある出張だった。
だからここに記録しておきたい。

越後湯沢で新幹線を降り「北越急行ほくほく線」という第三セクターの電車に
乗り換える。窓の外を眺めていると見えてくる山々には残雪が残っている。

気温は30度になろうかという初夏の暑い日だったのでびっくりしたが、思えば
ここは新潟だし、今はまだ5月なのだ。
山の雪などで驚くのはよそ者だけなのだろうか。
十日町の駅に着き、調べておいた蕎麦屋までてくてくと歩く。
ここでは「へぎ蕎麦」という蕎麦が郷土料理のようなのだ。
古い昭和を思わせる商店街を歩いてゆくと、線香の匂いがプーンとする。

こちらが「へぎ蕎麦」。
歯ごたえがぷりぷりしていて、恐らくは食感に特徴がある蕎麦なのだが、、生憎
僕の好みではなかった。。。残念!
取引先との約束時間にまだ早いのだが、時間を潰せる喫茶店のようなところが
まったくない。日差しもきついので、道路脇の日陰で汗を拭っていると乳母車
を押したおばあさんが通りすがりに声をかけてきた。

おばあさん「暑くなりましたね。日陰が恋しいですよね」
    僕「そうですね。まるで夏のようです」
おばあさん「わたし、こないだね、転んで腕の骨を折ったんですよ。だから
      ほら、こんなにまだ腕が腫れてるんです(右腕をまくって見せる)」
    僕「それは大変でしたね。どうぞお大事になさって下さい」
おばあさん「どうもありがとう」

こんな風に通りすがりの赤の他人と口をきくのは久しぶりだなぁ、と思った。
少なくとも、東京に来てからは全く記憶に無い。
でもとても清々しくていい気分である。

取引先との打合せを終えたが、まだ列車まで時間が1時間ある。
何かないかな?とスマホで調べるうち、歩いてすぐのところに「越後妻有里山
現代美術館」という立派な美術館があるようだ。
ともかく行ってみよう。

行ってみると驚くほど立派な美術館だ。
なんでも第5回大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2012という
現代アートのイベントを迎えて作られたものらしい。800円の入場料を払って
入ってみると、とても素敵な現代アート作品が展示されている(ちなみに
観客は僕一人)。素敵なミュージアムショップもあってとても満足。

これは思わぬ収穫だった。

HP:越後妻有里山現代美術館

帰り道、僕はとても満足していた。
いろいろ鬱屈していた気分がずいぶんと晴れた気がする。
それは単にどこかに出かけたから、ではなくて、おばあさんとの会話、
線香の匂いのする昭和の商店街、緑に囲まれた美しい土地、そして
センスの良い現代アートと美術館といった事々のコラボレーションが
もたらしてくれたものだと思う。
ああ、本当にいい「旅」だった!

付記:帰ってから調べてみるとこの場所から車で15分ぐらいの所に、直島で
   僕が感銘を受けたジェームズ・タレルの「光の館」という作品(建物)
   もあるようだ。ぜひこちらも訪れてみたい、と思っている。
   HP:光の館