風の歌が聞こえますか

僕に聞こえてくる風の歌を綴ります。

19・20世紀美術館(ウィーンにて③)

もう少しウィーンの事々を続けたいと思う。
ウィーン美術というと世紀末の画家、グスタフ・クリムトが挙げられる。
特に有名な絵は「接吻」。この作品を含むクリムトの作品の多くがベルヴェ
デーレ宮殿の19・20世紀美術館に展示されているということで見に行った。

面白かったのはクリムトの作品の年代によるその変化だ。
最初に僕が惹きつけられたのはカタログにも掲載されておらずポストカードも
売っていなかった「黒服を着た女性の肖像(Portrait of a lady in black)」。
ネットで拾った画像を以下に提示するが、この絵の女性の肌の綺麗なこと!
これは画集やネット画像では絶対わからないことだが、肌が木目の細かさ、
滑らかさはこれまで僕が見たあらゆる女性画の中でナンバーワンである。
クリムトは「接吻」のような絵を描かなくても十分一流だったのだ、とこの
絵を見るとはっきりわかる。

しかしその後、クリムトは変わってゆく。
1901年に描かれた「ユディト」では女性は既に官能的な表情をしている。

その表情は明らかに性愛の快楽に陶酔している顔だ。快楽と陶酔は金色の模様
よっても表象されている。面白いのは作品「ユディト」の表情がそれより前に
クノップフによって制作された「ニンフの半身像(ヴィヴィアン)」と似た
表情をしていること。この時代の世紀末の画家たちはエロスとタナトスを表現
することに実に精力を注ぎ込んでいたことが感じられる。そしてその後のクリ
ムトの作品では、女性はどれも実にエロティックな表情をしているのだ。

「ニンフの半身像(ヴィヴィアン)」


こちらが有名な「接吻」

この美術館にはエゴン・シーレの作品も多く展示されていた。
しかしエゴン・シーレは逆だ。
彼の絵は人体と性愛の薄汚さを示しているようにさえ見える。
こちらのほうが人生の真実を写しとっているように思うのだが、人口に膾炙して
いるのは圧倒的にクリムトだ。
面白いなぁ、と思う。