風の歌が聞こえますか

僕に聞こえてくる風の歌を綴ります。

ウィーン歴史美術館(ウィーンにて②)

これまでに僕が見たフェルメールの作品は全部で15点。
今回のウィーンの歴史美術館訪問でもっとも楽しみにしていたのは、もちろん
フェルメールの「絵画芸術」を見ることだった。これは以前の展覧会で日本に
来る予定だったのがこなくなったいわくつきの絵である。
今回、非常な期待を持ってこの絵をみたわけだが、正直に言ってさほどの
感動は沸き起こらなかった。何故だろう?

照明に一因がある。この絵に当てられている照明はかなり黄色みがかった色で
正直なところ絵が引き立つような照明とは思えない。天気が悪くて外光が少なく
照明の光に頼らないとよく見えないのもある。
しかし、それ以上にこの絵そのものに僕を惹きつけないものがある。
この絵は寓意画であるがゆえに、ストーリー性がないのだ。
他のフェルメールの絵にはどれにも「物語」のようなものが感じられた。
しかしこの絵はいわばフェルメールの「技術見本」のような絵で、絵そのもの
に物語があるように思えない。
また技術そのものにも違和感を感じる。描写がどこか表層的でテクニック的
にも他のこれまで見たフェルメールの絵に感じられる「深さ」が感じられない。
これは僕の一方的かつ見当違いの感想なのだろうか?

この美術館にはその他沢山の名画が展示されている。
ブリューゲルの絵は、とにかく楽しい。


沢山の人物が登場しその人物たちの行動を丹念に見てゆくだけであっという間に
時間が過ぎてしまう。それともうひとつ、ブリューゲルの絵の色使いの美しさ。
なんともいえない独特の暖かい色合いが実に素晴らしいと思った。
これは画集などでは気づかなかったところである。

ルーベンスの絵も沢山展示されている。
僕がルーベンスの絵で感じるのはとにかく「過剰」ということだ。

描かれている感情も過剰、女性や赤ん坊の肉付きも過剰。
とにかく、お腹一杯になる絵で、正直僕には今ひとつ良さがわかっていない。
このメデューサの首の絵も「過剰さ」の象徴だ。

今回一番衝撃を受けたのはカラバッジオの絵だった。
以前ドイツの取引先が「お前はフェルメールが好きらしいが、カラバッジオ
絵を見るべきだ。きっと感動するから」と言っていたのだが、今回、まとめて
カラバッジオの作品を見て、確かに驚きもし、感動もした。

カラバッジオの黒はすごい。
本当に黒ぐろとしていてこれ以上深い黒はないという黒色。
その黒色が生み出すコントラストの大きさと深さが、この上ないドラマトゥル
ギーを絵に与えているのではないか?

それにしてもこの美術館に収集されているコレクションは凄い。
ゆっくり見たら3日ぐらいは楽にかかるだろう。
いつかまた、再び訪れることがあるのだろうか。
カタログを買いながら僕は思った。