風の歌が聞こえますか

僕に聞こえてくる風の歌を綴ります。

瀬戸内の旅(終)−犬島アートプロジェクト−

4回に渡る旅行記も今回で最終回である。

        • -

豊島を後にして、僕たちの船は犬島に向かう。
ここには犬島アートプロジェクト「精錬所」という美術館と、直島と同様の
「家プロジェクト」がある。
犬島アートプロジェクト「精錬所」は、犬島に残る銅製錬所の遺構を保存・再生
した美術館で、既存の煙突やカラミ煉瓦、地熱などの自然エネルギーを利用した
環境に負荷を与えない三分一博志の建築と、三島由紀夫をモチーフにした柳幸典
の作品で構成されている。


さて「精錬所」は外観は遺跡、という感じである。



僕がこの煙突を見て反射的に思い起こしたのは「宮崎駿の雑想ノート」という
本にあった「高射砲塔」という漫画だった。煙突というもののぬっと青空に
屹立する柱はどこかしら邪悪な要塞の残骸のようなものを想像させる。


中に展示されていた柳幸典の作品は残念ながら僕にとってピンとくるものがなく、
もっぱらこの「遺跡」に興味を惹かれた。廃墟とか遺跡とか、そういったものは
どうして人を惹きつけるのだろう?


さて「精錬所」を後にして家プロジェクトを回ったが、こちらはアートディレ
クター・長谷川祐子、アーティスト・柳幸典、建築家・妹島和世が島の集落に
建物(ギャラリー)を展開しているもので、これも僕にとっては心を動かされる
ものではなかった。「中の谷東屋」だけはいかにも妹島和世の建築、とほほえ
ましかったけれども。


さて、一泊二日の駆け足ではあったけれども、秋晴れに恵まれた瀬戸内アート
クルーズもこれで最後になった。
やはり今回の衝撃は、なんといっても地中美術館である。
今回見ることができなかった直島の他の美術館にも心が残っている。
いつかきっと、こんどはベネッセハウスに宿泊してジェームズ・タレル
「オープン・スカイ」のナイトプログラムに参加したいと思う。
その時はゆっくりと地中美術館を楽しむことにしたい。