風の歌が聞こえますか

僕に聞こえてくる風の歌を綴ります。

「敗因と」

ドイツワールドカップでの日本代表チームの内幕の様子を50人以上の選手、
関係者に取材した内容をまとめた本である。ネットのコアなサッカーファンに
評判のよくない著者だったのが気になったものの買って一読してみた。

結論から言うと、一部に軽い(あるいは妄想系の)記事はあるものの、多くには
取材した相手の実名が入っていて信頼度の高い読み応えのある本になっていると思う。
ドイツW杯の惨敗については、ジーコが悪い、いや中田が悪い、いや選手たちがまとま
らなかったのが問題、などといろいろなことが言われているけれど、この本を読むと
原因は一つではないし、誰が悪い!と特定できるようなものではないことがわかる。

もちろん「責任」は別だ。
敗北の責任はジーコ監督やサッカー協会が取らなくてはならない。
しかし「何が悪かったか」は複雑で複合的で簡単なものではない。
当たり前だ。
社会にしてもサッカーにしても複雑系そのものなのだから。

この本の中には「日本代表は結局ひとつのチームになりきれなかった」ことを示唆
する沢山の証言が挙げられている。それは見方によっては「中田英寿の態度」が
原因のひとつのようにも思えるし「他のチームメートの子供っぽさ」も原因のよう
にも思えるし、「何も手を下さなかったジーコ監督や関係者」にも原因があるよう
にも思える。そんな中で選手たちは彼らなりに苦悩し、何とかしようと努力し、
頑張った様子もまたうかがい知ることができる。

かかわった人達は、それぞれいい加減な気持ちではなかった。
みんな、一生懸命だったのだ。
それでも何故かうまくいかない。
チームで仕事をする時、必ずそういう場面に行き当たる。
だから僕はこの本を読んでいて本当に身につまされる思いがした。
人ごととは思えないからだ。

それでも彼らよりも少し年上の僕は、曲がりなりにも一つの処方箋を持っている。
チーム内で諦めずにコミュニケーションを取り続けることだ。
それもオンサイトとオフサイトの両方で。
オンサイトのオフィシャルの議論だけでは日本人の気質からは一つにはなれない。
必ずオフサイトの場でお互いの信頼感を高める努力をすること。
お互いに信頼できない関係ではオフィシャルな議論も空転することが多い。

そういう意味ではやはり「キャプテン」の存在は大切だ。
これは実際に監督から「キャプテン」と指名される人でなくてもいい。
実際のチームの構成員の精神ネットワークにおいて「節」に位置する人。
誰もがその人のいうことは一応は(いやいやでも)耳を傾ける人。
そして時と場合によっては構成員の中のコミュニケーションを円滑にするために
諦めずに自らのプライドが傷ついても辛抱強く語りかけ続けることができる人。
チームで仕事をする時にはそういう「キャプテン」の存在がどうしても必要だと思う。

僕もまた、所属チームにおいて「キャプテン」であらねばならない立場にある。
構成員ひとりひとりと辛抱強く対面して話し、ある時は反発され、あるときは
そっぽを向かれ、あるときは苦笑される、そんな立場だ。
しかし、諦めてはならない、と肝に銘じている。
諦めてしまっては、ドイツのサッカー日本代表と同じことになる。
我々は「惨敗」するわけにはいかないのだ。

敗因と

敗因と