風の歌が聞こえますか

僕に聞こえてくる風の歌を綴ります。

M理論

「創世記機械」というSF小説があった。
この物語の中で、ある理論物理学者が統一場の理論を生み出すのだが、その
理論ではこの世界は六次元時空で記述される波動関数が四次元(三次元空間
+時間)に投影されたものとして記述されるのだった。

このアイデアを読んだときに受けた衝撃は今でも思い出せる。
今の我々の時空が、より高次元の場の投影であるという概念。
この世界は高次元時空の「影」にすぎないという考え方。
本当に凄い!と唸ったものだった。
(実はこのコンセプトは、1920年代に重力と電磁気力を統一しようと試みた
 カルツァ=クライン理論の派生型であることはずっと後になって知った)

しかし、時代はどうやらSFに追いついてしまったらしい。
今、統一場の理論として最も有力と目されているのは「M理論」という
のだが、それはもっとすごいのだ。

M理論ではこの世に存在する全ての素粒子は振動する恐ろしく小さな(あら
ゆる素粒子よりもずっと小さな)振動する丸く閉じた「ひも」であるとする。
そしてその振動パターンで各種のクォークの種別ができるというのだ。
そのひもは10次元空間で記述されるものだが、現実の世界は四次元。
そうすると残りの六つの次元は?
理論物理学者たちは、この六つの次元は「カラビ=ヤウ多様体」とよばれる
極小空間に「コンパクト化」されているため、我々には観測できないと考え
ている。さらに重力子(グラビトン)だけは「開いたひも」になっているた
め「この世界と違う世界(平行宇宙)」にも自由に移動できる、と言うのだ!
理論物理学者達にとっては「パラレルワールド(平行宇宙)」はもはや特別な
存在ではないらしい ^^;


カラビ=ヤウ多様体模式図

この理論が物理学者達の間で本命視されているのは、多くの謎を一気に説明
できるからだ。狭い学問的領域については:
相対性理論量子力学の統一
・宇宙の始まり(ビッグバン)がどうして起きたのかの説明
・宇宙開闢直後の急激な膨張(宇宙のインフレーション、と呼ぶ)の説明
・宇宙のダークエネルギー、ミッシングマス問題の説明

広い意味での「謎」については、ひょっとしたら??:
・死後の世界の存在の説明
ユングの言う「シンクロニシティ共時性)」の説明
・意識というものの謎の説明

何より嬉しいのは、この理論が「広い意味での謎」を解く方向性に開いている
ことだ。多くの物理学者、宇宙論学者が「人間原理」やデヴィッド・ボーム
の「暗在系、明在系」に関心を示しているように、科学者達もやはり一般人が
持つような疑問(あの世はあるのか?とか宇宙はどうして出来た?とか)を説明
できる理論を作りたい、と考えているらしい。
僕が生きている間に統一場の理論は完成するのだろうか?
いよいよこれからが楽しみになってきた。

# awayは「トンデモ野郎」だったのか? ^^;と思われる方がおられるかもしれ
  ませんが「M理論」についてここに書いたことは間違いでないはずです。
  疑問のある方は「M理論」で検索エンジンを当たってみて下さい。
  なお「広い意味の謎??」については僕の希望であり、私見であります。