風の歌が聞こえますか

僕に聞こえてくる風の歌を綴ります。

ブラームスは秋の匂い

いよいよ秋ですね。
風も急に冷たくなってきました。

ブラームスには秋のイメージがある。
特にピアノ小品のいくつかはそうだ。
ロマンツェ(Op.118-5)をゆっくりゆっくり探り弾きしてみる。
和音一つ一つが人生の黄昏を歌ってるかのようだ。
想い出を噛みしめながら、落ち葉がつもった公園のベンチで静かな諦念と共に
夕日を眺めているようなそんな「黄昏の歌」。
間奏曲(Op.117-1)も秋の曲だ。
この曲は、気温がぐっと下がった秋の朝、窓越しに外の景色を静かに眺めている
そんな情景を想像してしまう。

バッハ、モーツァルトベートーヴェンと続くクラシック音楽の系譜。
ブラームスは気の毒なことにこの三人が「成し遂げた」後に生を受けた。
かわいそうなヨハネス・ブラームス
彼はこの三人の成し遂げた恐るべき高みを目にしてどう感じたのだろう?
「いったいこの後に、自分に何ができる?」
そう思わなかっただろうか?

晩年のブラームス作品に漂う憂愁と諦念については「友人の死」「自らの衰え」
などによる、とよく言われるけれど、僕はどうしてもこの三人の影を感じて
しまうのだ。、
、、、、僕の、考えすぎかもしれませんが。

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秋というと必ず思い出す情景がある。

当時、僕はオランダのある機械メーカーと取引をしていた。
その会社が倒産寸前という情報が入り、最後に製造した日本向けの機械を間違い
なく出荷させるべく、僕はオランダとベルギーの国境の小さな町にあるその会社
の工場に張り付いた。
担当者は金策に走り回っており、部屋で一日待っていても30分くらいしか会って
貰えない。

ヨーロッパの秋は日がすぐ暮れる。
僕はその会社の応接室で、一人で窓越しに弱々しくなってゆく日差しを眺めて
いた。そして日がとっぷり暮れてしまうと、僕は重い足取りで街の小さなホテル
に引き上げるのだった。
オランダの家々はどこも出窓になっていて花で美しく飾られている。
中からは暖かそうな光が揺らめいてこぼれてくる。
それを見て僕は「ああ、日本に帰りたい」と無性に思ったものだった。

秋になると、なぜかこの情景を思い出す。理由はわからないけど。

# このエントリはうさぎさんの「秋の夜長にブラームス」
  にインスパイアされて書きました。

ブラームス:間奏曲集/4つのバラードより/2つのラプソディ

ブラームス:間奏曲集/4つのバラードより/2つのラプソディ

「バッハ弾き」と思われているグレン・グールドの稀代の名演です。