風の歌が聞こえますか

僕に聞こえてくる風の歌を綴ります。

植田正治のつくりかた

東京ステーションギャラリーで開かれている「植田正治のつくりかた」展を
覗いてきた。写真展を見に行くのは初めてだったりする。

僕が植田正治の写真と出会ったのは70年代だと思う。
当時、天体写真をやっていた僕は写真の基本技術にも興味があって、写真雑誌
をよく買っていた。そこ植田正治の写真に出会ったのだ。
強烈に印象に残ったのは砂丘をバックにした非現実的な写真だった。
どの写真もモノクロで、その白と黒のトーンもまた印象に残っている。

今回、植田の写真群を見てまっさきに蘇ったのは暗室の匂いだった。
僕も天体写真をやっていたので、フィルムの現像からプリントまで
自室に設えた暗室でやっていた。あの時の停止液(酢酸だった)や定着液、
はたまた最後の乾燥機でプリントを乾燥させるときの匂いなど。。
そうだ、あの頃の写真はとても手間のかかる化学的で、かつ、呪術的な
作業だったのだ。引伸し機で印画紙にフィルムを拡大投影して、現像液
に浸けてゆすると赤い電球のもとゆっくりと画像が浮き上がってくる。
ちょうど良い頃合いを見て、停止液のバットに移し、すぐに引き上げて
定着液に移す。
そんな作業のあれこれ、そして匂い、暗室の雰囲気などが一気に脳の中に
押し寄せてきた、そんな不思議な思いをした。

肝心の植田の写真については、昔持った印象と何ら変わらない。
モダンだなぁ、でも今風ではないよなぁ、でもシュールで不思議で素敵だ。
改めてそう思った。

植田正治のつくりかた