風の歌が聞こえますか

僕に聞こえてくる風の歌を綴ります。

ミラノ・スカラ座 ヴェルディ・ガラ・コンサート

思わぬ僥倖でスカラ座管弦楽団のチケットが手に入ったので聴きに行った。
場所は新しく出来た大阪のフェスティバルホールである。
実は僕はイタリア・オペラも、ヴェルディもあまり好きではない。
昔、アメリカ出張でシカゴに行った時、シカゴ交響楽団ヴェルディ
「レクイエム」を聴きに行ったことがあるのだが、時差ボケも手伝って
最初から最後まで爆睡してしたという経験もある。
なので、今回も正直なところあまり期待せずに行った。

演奏前の弦の音合せの時点で「あれっ?」と思った。
ただ合わせているだけの音なのに、その音が実に暖かくてよく響いて、
良いのである。これはひょっとすると凄いオケなのかも?と思って期待が
膨らんだ。指揮者はグスターボ・ドゥダメル。気鋭の若手指揮者である。
そして、最初の「ナブッコ序曲」が始まった瞬間、僕はぶっとんだ。
なんという完璧な合奏!
こんなに完璧でいながら、冷たくないアンサンブルは聴いたことない。
合奏が完璧なので、フォルテシモでもうるさくなくひとつの楽器の演奏の
ように聞こえる。音楽は実によく歌い、イタリアの陽光を思わせるアポロン
的な明るさと暖かさに溢れている。

もうひとつ、僕が感心したのは、ピアニシモの立ち上がりだ。
完全な無音からピアニシモの最弱音までが滑らかに立ち上がってくる。
なんの凹凸もなく、まるで水平軸から立ち上がる数学の曲線のよう。
そして高級スポーツカーのエンジン音のように、立ち上がってくるときに
音に雑味がないのである。
それが、弦パートだけではない。木管も(日本のオケでは弱点になりがちな)
金管も完璧で、どこを取っても全くスキがない。
超一流のオーケストラとは本当に凄いものなのだ、そして超一流とはここまで
明確に違うものなのだ、と僕は唸った。

さて、歌い手はマリア・ホセ・シーリ(ソプラノ)とスチュアート・ニール
テノール)の二人。歌も実に良かった。特にニールの歌唱力は素晴らしく
(高音はハイCまで出ていたのでは?)、この人にワーグナーの「指輪」
ジークムンドを歌ってほしい、と思わず思ってしまった。(結局、僕は
ドイツオペラの方が好きなのである)

いやはや、こういうのを一度聴いてしまうと普通のオケを聴きに行こうか
という気が萎えてくる。なんだろう、サッカーで言うと、ヨーロッパ・
チャンピオンズリーグを見た後でJリーグの試合を見るような、そんな
感じだろうか。高くてもベルリン・フィルウィーン・フィルを聴いて
みたい、という誘惑に駆られる。
ただ、コンサート後もイタリア・オペラに対する興味がましたわけではない。
僕は「オーケストラの性能」に感心はしたが、「演奏された音楽」には一向
に関心が湧かなかった。
ますますもって、本当に僕はイタリア・オペラとは縁がないようである。