風の歌が聞こえますか

僕に聞こえてくる風の歌を綴ります。

高速化するビジネスフィールド

僕が新入社員として会社に入った頃は時代もまだのんびりしていて良かった。
地方への出張ともなると、少なくとも特急列車に乗っている間は電話もかかってこないし
(携帯電話なんてなかった)、上司に怒られることもない。
のんびり昼寝したり、本を読んだり、駅弁を食べてぼんやり外を眺めたり、楽しかった。
しかし、最近のビジネスマンにはそんな暇もなくなりつつあるようだ。
携帯電話やE-mailといった文明の利器はビジネスマンをより忙しくはしても、楽にさせて
くれてはいない。


スポーツや将棋などの世界でも最近、戦術のノウハウや常識がほぼ全ての(ある一定レベ
ル以上の)プレーヤー、組織において理解され、整備されているので、世界中のどの
チーム、どの個人でも広く理解されているもっとも効率的で有効な戦術を勉強し、取り
入れた上で戦いに臨むようになっている。
その結果、世界のどこにおいても似たような戦術、組織(個人)管理手法をベースに、
いかにバトルフィールドでチーム(個人)が高速で継続的にパワフルにプレーできるかが
勝敗を分けるようになりつつある。


ビジネスにおいても同じトレンドが感じられる。
MBAで教えられている内容がどの企業でも研修の対象とされ、戦略策定のツールとして
当たり前に使われるようになった今、各企業の戦略策定能力の差は縮まりつつあり「明白
な悪手を打つ」企業は徐々に減りつつある。明らかな戦略的誤謬が少なければ、退場して
ゆく競争相手も少なくなり、業界内の競争はますますタフになる。
そこで明暗をわける大きなファクターが組織の戦略遂行スピードと修正能力である。
いかに組織を効率的に動かすか、いかに組織の構成員の遂行スピードを上げるか、いかに
情報をフィードバックして修正をかけるかが勝敗を分ける大きな要素となる。


では、どうすれば構成員(組織)を効率的に動かすことができるか?
また、どうすれば彼らの戦略遂行スピードとフィードバック能力を上げられるのか?


個々の要素(構成員)が企業戦略のベースに沿って現場で瞬時瞬時に判断できるように
育てる以外ない、というのが僕の考えである。サッカーで言えば、個々のフィールド
プレーヤーが状況に応じて瞬時に戦略的に(ゲームプランに基づいた)最適のプレーを
選択できるようになることと同じだ。
それも競合他社以上に高速で戦略的判断を行い、高速で行動する。
全員が共有された戦略理解に基づき、判断し、フィードバックし、動くことで、仕事に
「連動性」が生まれ、組織そのもののアクションも高速化する。


これには副次的な利点もある。
個々の組織員の戦略策定能力が上がれば、将来、組織のリーダーになってもらうことが
容易になる。また同じ戦略概念を共有することで、お互いの理解が容易になりコミュニ
ケーション密度が上がり、この面でも優位性を出すことが出来る。
また、構成員の個人的キャリアアップの面でも(社内でなく社会の中でのキャリアアップ
においても)無意味ではないだろう。


問題がないわけではない。
ひとつは組織における思考多様性の面に懸念があること。(これは別の方法で補ってゆく
ことを考える)
もうひとつはもっと深刻で、これを行うためには、個々の構成員は相当量の勉強を余儀
なくされることだ。
仕事時間中に勉強するわけにはいかないから、プライベートの時間を割くしかない。
今でさえ、彼らは英語や中国語の勉強に相当量の時間とお金をつぎ込んでいる。
日中は高速化するビジネスフィールドで体力と集中力を酷使した上で、ただでさえ少ない
彼らのプライベートの時間をさらに勉強に費やすよう要求しなくてはならない。
組織の長として、それをどういう形で進めたらよいものか?
今、思案中である。