風の歌が聞こえますか

僕に聞こえてくる風の歌を綴ります。

営業戦略について思うこと

正月休みを利用してビジネス書をあれこれ読んでいる。
営業戦略論やマネジメント論など読んでいて、読んでいる最中はなるほど、ごもっとも、
と思う。しかしながらこれらを実戦に応用しようとするとずいぶんな時間と手間が
かかる。本当にそれだけの意味があるのか。


例えばマイケル・ポーターの競争戦略など、仕組みは軍事戦略論とまったく同じと言って
いい。外部環境を知り、敵状を知り、自らの状況を再認識して最善の戦略を構築する。
しかし、いざ戦いが始まると戦場の状況は刻々と変化する。
戦史を紐解くと、だいたい戦場では錯誤と偶然の連鎖で思いもかけぬ事態が発生する。
そして、情報誤認や事前の認識不足から、戦況は当初の戦略とはまったく違った方向
に進み、状況を最終的に決定づけるのは偶然に引きずられた何かであったり、戦場で
戦う兵士の執念であったり、指揮官の勘違いであったりするのだ。
彼我に圧倒的な情報格差がある場合を除いて、戦略がそのまま有効に作用すると考え
るのは楽観的にすぎる。


ビジネスの現場も上述したような戦場と全く同じだ。
営業戦略は戦いを始める時点で、サッカーで言うところの「ゲームプラン」としては
有効であるが、いざ戦争が始まってしまったら、そこでの状況の打開は現場において
行っていくしかない。サッカーでも戦略論は馬に食わせるほど世にあり、評論家たちは
意見を戦わせるが、いざ試合が始まったらそこには「現場の知恵」しかない。
特に泥仕合になれば、現場指揮官の経験と勘、フィールドで戦っているプレーヤーの
根性と個の力、刷り込まれた連動性が勝負を左右するのだ。
営業の現場でもまったく同じで、最終的に死活的に勝敗を左右するのは、やらねばなら
ないことを身を挺してやりきる営業マンの個の力や、負け戦になっても冷静に現場状況
を見て判断できる現場指揮官の存在である。


僕が思うに、営業戦略は新規参入時や、新しく方針を立てなおして再スタートする際に
「何をしてはならないか」を決めるには有効であろうと思う。まったくの徒手空拳で
直感と雰囲気だけでどうするかを決めるよりは失敗のリスクは減らすことができる
だろう。しかし最終的には論理ではじき出された答(営業戦略論から導き出される答)
は選択肢の一つではあっても、それがそのまま採用されるべきではない。


【引用始まり】 ---
戦略計画はリスクをなくすためのものではなく、最小にするためのもの
でもない。そのような試みは、最後には、不合理かつ際限のないリスク
と確実な破滅を招くだけである。
(中略)
リスクを皆無にすることは不毛である。
最小にすることも疑問である。
得るべき成果と比較して犯すべきリスクというものが必ずある。
      (ドラッカー「マネジメント 基本と原則」より)
【引用終わり】 ---


指揮官は全責任を負う以上、己が全責任を負うに足るやり方を選択するべきである。
何故なら、マネジメントの本質はドラッカーも言う通り『責任』であるからだ。
そして、改めて、現実の戦場で勝敗を分けるのは戦略以外のファクターが大きいこと
を肝に銘じたい。