風の歌が聞こえますか

僕に聞こえてくる風の歌を綴ります。

正倉院展と平城京跡

秋晴れの一日、思い立って休暇を取り正倉院展平城京跡に行ってきた。
正倉院展に行くのは2年ぶり。話題の平城京跡は初めてである。


奈良国立博物館に着いたのは朝10時頃。
平日の朝早くだから空いているだろう、という期待は空しく外れてすでに沢山の人が
並んでいる。入場までは15分待ちでそれほどでもなかったが、中に入ると人、人、人、
だ。2年前と全く同じで会場のオペレーションが悪く、つまりは人を入れすぎなのである。
待ち時間がもう少し長くなったとしても、入場制限をして会場内の観客数を減らさないと、
とてもゆっくり鑑賞はできないと思う。


展示品についての感想は2年前と何ら変わらない(展示されている品は全く違う)。
つまり「素晴らしい工芸品だが芸術ではない」ということ。
今回の目玉は「螺鈿紫檀五絃琵琶(らでんしたんのごげんびわ)」だと思うが、
これは誠に見事な細工物であるが、楽器というより工芸品である。
今回、僕が一番印象に残ったのは伎楽面という儀式の際にかぶる仮面で、ひとつは
酔胡王といい鼻が異様に高い酔っぱらった西域人の面、もうひとつは迦楼羅
いう、インドネシアでいうガルーダ(鳥の神様)の面である。
これらは平安以降の日本では見られないような異様な面構えの面で中国からの伝来
品ではあろうが、天平文化の国際性を感じさせる逸品であった。
あと面白かったのは道鏡の直筆の文書で、その書は太く大ざっぱで勇壮な感じである。
道鏡というひとの性格が偲ばれるようで面白かった。
また前回も感想に書いた通り、写経の書は実に繊細で美しく改めて感心した。


とは言うものの、どうも正倉院宝物と僕とはあまり相性は良くないようだ。
美術館で絵画や彫刻を見るときほど集中できないし、興味を湧かせられないなぁ、などと
思いつつ、国立博物館を後にして平城京跡に向かう。


平城京跡は遷都1300年祭のメイン会場なので、大和西大寺から無料のシャトルバスが出て
いる。会場に到着してまず思ったのは「なんと広大な!」ということである。
南の朱雀門から大極殿まで距離にして880m、面積にして130ヘクタールの範囲のほとんど
が未整備のままの野原で、図らずも平城京の広さを体感できるようになっている。


前庭から眺める大極殿。人と較べて前庭の広さ、大極殿の大きさがわかる。


朱雀門大極殿も立派に復元されていて見応えがあった。
特に面白かったのは、大極殿の太い柱に沢山のひび割れがあったことである。
これは当時のままに復元しようということで敢えて残されたものと思う。
柱や建築物の朱色はベンガラを塗ったもものと思っていたが、丹土という赤土を塗った
ということである。


こちらも沢山の観光客が来ていたが、何しろ会場が広いので相対的に余裕がある(笑)。
ゆっくりと平城京跡を散策し、天平の昔に思いを馳せることができた秋の一日であった。