風の歌が聞こえますか

僕に聞こえてくる風の歌を綴ります。

軽井沢・野辺山紀行(2)

旅行の二日目、カーテンを開くと快晴である。
今日は念願の野辺山宇宙電波観測所に行くのだ。
ホテルのフロントに話をして観測所まで車で送っていただく。


観測所の守衛所で入門手続きをし、お願いして荷物を預かっていただいた。
敷地に足を踏み入れると、彼方の正面に巨大な45m電波望遠鏡が鎮座している。
胸に感動が湧き上がる。
なんと美しい望遠鏡だろう、という思い。
ああ、やっと来たのだ、ここに。という思い。
本当はこんなところで働きたかった、僕は人生を間違った、という思い。
さまざまな思いが胸の中で交錯したまま僕は呆然と立ちつくしていた。


天文台全景。
手前に守衛所がある。


45m電波望遠鏡に向かう道すがらにはミリ波干渉計の10mバラボラアンテナ群が
一列に並んでいる。ひとつひとつは小さな望遠鏡だが6台のアンテナをケーブルに
繋いで同時観測することで直径600mの電波望遠鏡に匹敵する解像力を持つ。

写真にあるように、この10mのアンテナはレールに乗せて必要な位置に移動する
ことができるようになっている。
そしてこれが45m電波望遠鏡

国内最大の電波望遠鏡である。
近くでみると本当に巨大だ。
巨大ではあるけれど波長の長いミリ波(波長1〜10mm)の電波の観測に用いるので
実は解像度は良くない。望遠鏡の解像度は波長に比例し、口径に反比例するので
計算してみると、小さな直径5cmの屈折望遠鏡程度の解像度しかないのだ。
なるほど、いかに困難であっても干渉計の技術が必要になるわけである。
さて、電波望遠鏡を注意深く見るとBSアンテナなどとは決定的に違う部分がある。
それはアンテナの中心のおわんの底の部分に穴があいていることと、アンテナの
中央に支えられた「副鏡」の部分だ。BSアンテナではこの副鏡の部分に受信機
があって、電波を捉えるようになっているのだが、電波望遠鏡では副鏡は
バラボラで捉えた電波をもう一度跳ね返して穴の奥の受信機に送り込むように
なっている。形は全然違っても、カセグレン式反射望遠鏡と同じなのだと実感した。


ゆっくり45m望遠鏡を見学した後、ミリ波干渉計観測棟前に展示されている
いくつかの望遠鏡を見学。
こちらは太陽電波を観測するヘリオグラフ。

そしてこちらは恐らく昔使っていた17GHz太陽偏波計。


そしてこれは日本の電波望遠鏡第一号。


どこから見ても到底、電波望遠鏡には見えない。


興味深いのは電波望遠鏡第一号も17GHz望遠鏡も軸が斜めにかしいだ赤道儀式架台
に乗っているのに対し、ヘリオグラフも、ミリ波干渉計も、45m電波望遠鏡も垂直・
水平の二平面で動く経緯台方式となっていること。
経緯台方式は大きな荷重を受ける場合適した方式であるが、反面、天体を自動追尾
するにはコンピューターが必要である。よってコンピュータが普及してから、採用
されるようになったのであろう。


昔の天文少年はすっかり時の経つのを忘れてしまっていた。
さぁもう駅に向かわなくては。
名残惜しく感じながら、僕は観測所を後にした。