風の歌が聞こえますか

僕に聞こえてくる風の歌を綴ります。

国立天文台 三鷹

かねてから行ってみたいと思っていた三鷹国立天文台に思い立って出かけた。
もう長らく星を見ていないものの、僕のようなオールド天文ファンにとっては
三鷹の東京天文台』には特別の思い入れがある。
天文学者で言えば、富田弘一郎氏、古在由秀氏、古畑正秋氏などの名前がすぐ
に頭に浮かぶし、日本最大の65cm屈折望遠鏡小惑星Tokio」「Nipponia」など
を発見したブラッシャー天体写真儀などの観測機材に思いを馳せたものだった。


京王調布駅からバスに乗り、天文台前で下車すると歴史を感じさせる門がもう
目の前だ。見学は無料でワッペンを胸に貼ってコースの中を自由に散策できる
ようになっている。
最初に向かったのは「第一赤道儀室」


どうだろうか、この歴史を感じさせる観測ドームは(国の登録有形文化財とのこと)。
中の望遠鏡は1927年製造のカール・ツァイス社製の20cm屈折望遠鏡
実に歴史を感じる素晴らしい機材である。
次に大赤道儀室(天文台歴史館)に向かう。
こちらも登録有形文化財の木製内張の観測ドーム。


納められているのは同じツァイス製の65cm大屈折望遠鏡
筒の長さが10m以上の実に見事な美しくレトロな望遠鏡だ。
現在の大望遠鏡は殆ど全てが反射望遠鏡で、口径もやれ5mだ、10mだ、と桁違いの
大きさであるが、僕は望遠鏡らしい望遠鏡はやはり屈折望遠鏡、と思っている。
19世紀の有名な天文学者E.E.バーナードがヤーキス天文台の100cm屈折望遠鏡
接眼部にもたれかかっている記念写真があるのだが、そんなことができる大型の
屈折望遠鏡に僕はとても憧れたものだ。

この65cm望遠鏡なら間違いなくそれが可能だろう。
京都大学も飛騨天文台にこれと同じ大きさの65cm屈折望遠鏡を持っているが
あちらもいつか見学してみたいものである。
さて、こちらは太陽観測専用のアインシュタイン塔。


残念ながら中の見学はできなかったが煉瓦造りの美しい建物だ。
この塔は中が中空になっていて、ドームの中の2枚の平面鏡で太陽光を導き入れ
スペクトル観測ができるようになっている。
この写真でもわかるように天文台は緑の中にドームが点在するようになっていて、
実に閑静な落ち着いた雰囲気の中にある。


その他にはレプソルド子午儀やゴーチェ子午儀といった歴史的観測機器もあったが、
(それぞれの置かれている観測室から立ちのぼる大正・昭和初期の匂い!)僕に
とってもう一つの感動は歴史館にあったいくつかの展示品だった。
そのひとつはブラッシャー天体写真儀の観測原簿。
もうひとつは観測機器で撮影された写真乾板のオリジナル(それもライトボックス
にセットされてルーペで詳細に見れるように展示されていた!)。
これらは天文ファンならば感涙ものだと思うのだが。


残念だったのはブラッシャー天体写真儀の現物を見ることができなかったこと。
1905年製アストロ・ベッツファール4枚玉と呼ばれる当時最先端のレンズ系を
持つアメリカ製の20cm天体写真儀は僕にとっては特別な存在だったのだが。。
帰宅してネットで調べたところによれば、既に撤去されて上野の科学博物館に
引き取られたらしい。
今はこちらに展示されているのだろうか?
上野にも行ってみよう。