風の歌が聞こえますか

僕に聞こえてくる風の歌を綴ります。

背中に家紋

最近歩いているときの自分の姿勢が良くないことに気がついた。
知らず知らずのうちにうつむき加減だったり、背筋が曲がったりしている。
疲れが出ているのかもしれないけれど、いかんなぁと思っていた。
たとえどんな状況でも背筋をしゃっきり伸ばして歩きたいものである。
そんな時、たまたまこういう内容のことを読んだ。

【引用始まり】 ---
紋付きというのは家紋が五つついています。胸に二つ、袖の後ろに二つ、
大きな門が背中に一つ。
つまり家紋は三対二の比率で「後ろから見られるもの」なのです。
家紋は、背中に背負う家格の象徴です。気安く触られたり泥をつけられては
いけない、非常に大切なものを背中の真ん中に背負っていたわけです。人間
が身につけている一番大切なものは、「自分では見ることができず、他人
から見られるだけの部位」に貼り付けられていたのです。
これは昔の武士の身体感覚を想像するときの一つの手がかりになると思い
ます。武士が歩いているとき、その意識は「背中」にあったということです。
          「疲れすぎて眠れぬ夜のために」(内田樹著)より
【引用終わり】 ---

家紋と武士の意識についてこの言説が正しいかどうかは、僕も確認していない
けれど(申し訳ないが内田先生の言説には「?」というものもあるし、中沢新一
ばりに「言いくるめられているような気がする」文章も書く人なので)面白い
話であるはと思った。そして、それではひとつ、背中に家紋をつけていることを
想像して歩いてみようか、と思い立った。

すると、不思議である。
背筋はなぜかしゃんと伸びるのだ。
だいたい家紋、なんてものをこれまで意識したことすらないのに(だいたい家紋を
描いてみろ、と言われても描けない)「背中に家紋がある」と思っただけで、いや
「自分の背中を意識する」だけで背筋は伸びるものなのだ。
これにはちょっと感動してしまった。

嘘だと思ったら、皆さんも一度試してみてください。
僕はしばらくは背中に家紋を背負っている気持ちで歩いてみようと思います。