風の歌が聞こえますか

僕に聞こえてくる風の歌を綴ります。

狂気潜むもの

昔々の大昔、まだ子供だった頃、僕はプロレスが大好きだった。
何せ定期入れの中に入っていたのはアントニオ猪木が鬼のような形相で拳を握り
しめた写真だったほどである。
とまぁ、こんな話を書くとそれだけで引く人もいらっしゃるでしょうが、まぁ
ともかく最後まで読んでください ^^;

プロレスと言っても僕が魅了されたのはもっぱら猪木のプロレス(=新日本プロ
レス)だった。まぁプロレスといえば皆さんご存じの通り、あらかじめ役柄の
決まっている一種の演劇であって、しかし、それくらいはいくら子供の僕でも
知っていた。しかし、猪木のプロレスには如何にもワンパターンの筋書き通りに
進む馬場のプロレス(=全日本プロレス)にはない、その場からはみ出す何か
があったように感じられたのだ。
それは一種の『狂気』と言ってもいいかもしれない。
プロレスであれ、演劇であれ、音楽であれ、今ある枠を突き破って狂気をはらみ
つつ疾走する姿、それは人にカタルシスをもたらす。
そう、「感動」ではない「カタルシス」を。

狂気、というと自分の日常から遠いもの、と思うのが普通かもしれない。
しかし僕は、そうではない、と常々思っている。
「狂気をはらむ何か」を枠からはみ出しながら表現している人達は皆、こういう
風に感じているのではないだろうか。
『この世のあらゆる狂気は自分と縁遠いものではない。
 狂気は自分とこの世界を構成している親しみ深い一部だ』と。

狂気は、我々の内側に確かに存在しているのだ。