風の歌が聞こえますか

僕に聞こえてくる風の歌を綴ります。

不可逆過程

常々思うのだが、人間の感情ほど難しいものはないのではないか。
僕の職場でもどうしようもなく感情的にねじれた関係になってしまい、もう
一切解決の糸口がなくなる状態に陥ってしまった一部の人たちがいる。
それを見るたびにつくづく人間関係は「不可逆過程」だな、と思うのだ。

「本音、正論をぶつけ合えることこそ『本当の』関係」などと言っていきなり
正論をまくしたてる人がいるけれど、おいおいちょっと待ってくれ、と言いたく
なる。
僕の認識では、人間関係は最初に信頼関係ありき、だ。
感情的にイケ好かないヤツ、と思っている時はたとえどんな正論でも聞く気に
ならないものだし、反対に屁理屈でもこっちが好意を持っていると何となく納得
してしまったりする。
だからまず、本音なり正論に入る前に感情的に受け入れできる土台、つまり信頼
関係を作るべきなのだ。

なんとも怪しからん、そんなだからこの世の中いつまで経っても駄目なんだ正論
は正論正義は正義、というご意見もあろうとは思うが、人間の本性を無視した
暴論だと思う。本当に現実を動かす、ということはパソコンやスピーカーの前で
格好良くアジることでない。

もちろん、中にはいけ好かない相手でも正論は正論として耳を傾けようと感情
を抑えて努力する人はいる。立派であるが、それは受け手の個性と度量の問題で
あって、相手がそうであることを期待するのは甘えん坊の世間知らずだと思う。
逆に、他方ではこの「真理」を逆手にとって「正論なんて一切不要!要は相手と
調子を合わせてうまくさえやって行ければいい」と公言する人もいる。
成る程。
でも僕はそういう馬鹿とは、金輪際、友達になりたくないです。

さて、そういうことなので、感情的に良好な信頼関係を保ち続けるには本当に
努力がいる。人間関係は傷つけ合ったり、喧嘩したり、再構築したり自由自在
だと思っている人もいるけれど、僕はそれに与しない。人間関係は基本的に
「不可逆過程」なので一度壊れた関係を修復するのは大変難しい。
だから壊さないように、自分の一時の感情(怒りや失望)に流されないよう、
大切に大切にしないといけないのだ。
もし、その関係が自分にとって本当に大切なものであるのならば。