風の歌が聞こえますか

僕に聞こえてくる風の歌を綴ります。

ハワイ紀行(3)真珠湾で思ったこと

ハワイ旅行の最終日、真珠湾に行くことにした。
言うまでもなく真珠湾は第二次大戦開戦にあたって日本軍が奇襲攻撃を行った
場所であり、そこには当時沈められた戦艦の上に記念館があって『いかに日本は
米国に対して卑劣な戦争を仕掛けたか』ということを訴える映画を上映ししている。
僕は初めてハワイを旅した時にこの記念館を訪れたのだが、映画の日本語の解説と
英語の解説が違っていたこと(英語の解説はよりストレートに日本人の卑怯さを
罵っていた)が何より印象的だった。
米国の退役軍人の人達が多く訪れていたのも印象に残っている。

今回、僕はこちらではなく、もう一つの記念館に立ち寄った。
それは「ミズーリ博物館」。
つい先日退役したアメリカ海軍の戦艦ミズーリを博物館にしたものだ。
戦艦ミズーリ戦艦大和に対抗できるアメリカ最大の戦艦として建造された。
第二次大戦で華々しい戦果ををあげることはなかったが、終戦にあたりこの艦の
甲板で日本の全権大使だった重光葵が降伏文書に署名したことで知られる。


これがミズーリの外観。
全長270m、排水量58000トンの巨大な戦艦だ。
そしてこの写真が重光がサインした降伏文書(レプリカ)

デッキに上がるとこんな写真が展示してあった。

左が日本の神風特攻隊のゼロ戦の体当たりの瞬間を写した写真(青い矢印)。
そして、その体当たり攻撃で艦体についたへこみが右の矢印の部分。
搭乗員は岡山の19歳の学生だったことがわかっているそうだ。
上左の写真が撮影された数秒後、彼は巨大な戦艦に右の小さなへこみを残して
命を落とした。
僕は、しばらく、このへこみから目を逸らすことができなかった。

「きけ、わだつみのこえ」という戦没学生の手記をお読みになった方はおられる
だろうか?神風特攻隊という無謀で無意味とも言える自殺攻撃に出撃させられた
学生達の残した文章を集めたものだ。透徹した思慮深い知性と品性を持った沢山
の青年達がこの狂気の命令によって命を散華させられた。
戦争という集団的狂気の中で必死に「自分たちが死ぬ意味」を求めて苦しんだ
人達の言葉は、僕に多くのことを、そう「極限までつきつめて考えるということ」
を教えてくれたのだ。


最後にこの写真を見てほしい。
カウアイ島からの帰途、着陸寸前に空撮した真珠湾アメリカ海軍基地だ。
米軍の空母、巡洋艦駆逐艦がぎっしりとひしめいている。
この戦力だけでも、中規模の国一つを「消す」のはたやすいだろう。

マリンスポーツとショッピングのパラダイスであるハワイ。
沢山の日本人が結婚式をあげリラックスして休日を過ごすハワイ。
それとはまったく別のハワイの一面がここにあった。