風の歌が聞こえますか

僕に聞こえてくる風の歌を綴ります。

尊敬する人

僕の会社の同じ部署に密かに尊敬している人がいる。
Nさん、だ。
自分もこんな風でありたいなぁと思うあこがれの大先輩。

Nさんはもう定年退職されて、今は「嘱託」という扱いだ。
以前はラインの管理職をされていたのだが、今はかつての部下の若い社員の依頼や指示
を受けて淡々と日々仕事をされている。
休日出勤も厭わず客先の無理難題を軽やかに仕切ってゆくその業務能力にはもちろん
敬服すべき点は多々あるのだが、僕はそれ以上にこの人の人柄に感銘を受けている。

Nさんは曲がったことが大嫌いだ。
裏工作やケチな芝居や卑怯な嘘やゴマカシが何より嫌いなのだ。
常に正々堂々と正直に真正面から行く。
それがNさんのスタイル。
だから、普通の人以上に苦労に直面することも多い。
トラブルの時は誰しもそうだが、ごまかしてなんとか楽に切り抜けたい、という誘惑に
駆られるものだ。
しかし、Nさんは真正面から誠心誠意とことん最後までやる。
これは、なかなか真似できることではないのだ。

純粋に金儲けの観点から考えると「効率が悪い」ということになるのかもしれない。
「もっと要領よく」と。
Nさんがさほど出世できなかったことはそのことと無縁ではないだろう。
しかしそれはNさんのスタイルではない。
「俺はそんな生き方はしたくない」
Nさんは全身でそれを主張している。

もう一つ僕が感心すること。
それは、Nさんが内部で絶対愚痴をこぼさないことだ。
以前、飲んでいるときに僕にこう述懐されたことがあった。
「なぁ、○○くん、僕も以前は管理職だったわけだし、若い人たちの乱暴な指示であれ
これ仕事させられることについて、まったく感情が動かないわけではない。でもね、
野球を考えてみたら(Nさんは昔、野球をやっていた)ベンチで座ってる控のベテラン
がチームや監督の悪口を言ってたら絶対勝負に勝てない。
ビジネスという真剣勝負の世界でこのチームが勝つために今の自分はどういう役割を
求められているのか、僕は常にそれを考えている。
どうすれば自分がチームに一番貢献できるのかをね。
僕には僕なりにやるべき事、課せられた役割と任務がある。
だから日々それを果たすだけのことさ」

歳をとると、顔の造作とは別に美しさで輝く人と、醜く崩れてしまう人がいる。
後半生の人の顔はその人の「人生での所業」で決まる、というがいろいろな人を見て
きて怖いほど本当だと思う。
Nさんはハンサムではないが、いつも「美しい顔」をしている。
自分の生き方、道行きに自信と誇りを持って、まっすぐ意志的に生きること。
僕も、このようでありたいと思う。
そして身近にこういう人がいることをとても嬉しく思う ^^