風の歌が聞こえますか

僕に聞こえてくる風の歌を綴ります。

M41

冬の夜、南天を見上げるとオリオン座と大犬座が見える。
ひときわ明るい星がシリウス(天狼星)。
全天でいちばん明るい恒星だ。

僕が星に興味を持ったのは高校一年生のとき。
当時、僕の部屋は南に面していた。
勉強机の横の窓から、ベランダ越しにシリウスがいつも見える。
僕は双眼鏡を持ち出してシリウスを入れ、そこから少し南へ視野を振る。
晴れていて、空気の透明度がいいと、ぼやっとした星雲状の塊の周囲に
ぱらぱら、という感じで小さな星の集まりが見えてくる。
これが散開星団M41(メシエ41)。
都会の空に双眼鏡では美しい、とは言えないけれど、それはともかく、
部屋の中から、窓越しに見える星団は他になかったので嬉しかった。

これがオリオン座の大星雲などになると、上の階のベランダの庇が邪魔
になって部屋の中からは見えなかった。夏空でも、さそり座やいて座
には明るい星雲などもあるのだけど、あいにく夏空は大抵ぼんやりして
いてキレイに見えた記憶は、ない。

そのうち、寒くなって我慢できなくなって窓を閉める。
そうすると、窓ガラス越しでは星達は途端にぼやけるのだった。
きりり、と引き締まった鋭い星の像を眺めるには、どんなに寒くても窓は
開け放しておく必要があった。
もっとよく見ようと思って、頑張って屋上に望遠鏡を持ち出して倍率を
上げて眺めると、M41は星と星の距離が離れ過ぎて、あまりキレイじゃ
なかった。この星団を見るには、双眼鏡ぐらいがちょうどよかった。

僕は、あの頃は、天文学者になりたかったんだ。
冬になるたびに、懐かしく思い出す。