風の歌が聞こえますか

僕に聞こえてくる風の歌を綴ります。

ニューヨーク、ニューヨーク。

僕の生まれて初めての海外出張はアメリカだった。
26歳の時、たったひとりで3週間。
ニューヨークに入り、ロサンゼルスから帰国した。

当時、僕はアメリカに大きな憧れを抱いていた。
自由とパワーの国。
サクセスストーリーの国。
アメリカンドリームの国。
胸一杯の憧れを抱いて、僕は飛行機に乗った。
僕もまた、若かったのだ。

ニューヨークに到着した夜は興奮してろくろく眠れなかった。
ホテルの窓から見ていると、夜が明けるにしたがってだんだんにセン
トラルパークが浮かび上がってくる。僕は矢も盾もたまらずホテルから
飛び出し、まだ薄暗く人気のないセントラルパークをぐんぐん歩いた。
たまにすれ違う人はジョギングしている人で、リスがあちこちを走り
回っている。
それから、道路のあちこちの換気口から立ちのぼる水蒸気。
まるで、映画「エイリアン」の宇宙船の中みたいだ、と思った。
ああ、、今もあの光景は目に浮かぶ。

朝になり会社のニューヨーク事務所に行った。当時、僕の会社の事務所は
マジソン街にあった。確かブルックス・ブラザーズが入っていたビルの
隣のビルだったように記憶している(記念にBBでクラシックな柄のネク
タイを2本買った)。事務所に行って駐在員に挨拶すると、彼は日頃の
鬱憤が溜まっていたらしく、僕にアメリカ社会、アメリカ人の不平不満を
ぶちまけた。

彼の家の窓ガラスが割れ、ガラス屋に修理を頼んでも一向にやって来ない。
何回督促しても、口約束ばかりでちっとも来ない。
さて、最後にどうするのか?
「I will sue you!って怒鳴るのさ」と彼は言った。
なるほど。『訴えてやる!』か。

Burger King(当時日本になかった)で、Whopperというレタスやトマトが
いっぱい挟まったハンバーガーを食べて、こんなに美味いハンバーガーが
あるのか、と仰天したことも思い出だ。
それから僕は、グランドセントラル駅からロングアイランド鉄道に乗り、
不安を胸に最初の訪問地に向かったのだった。

あ、長くなってしまったけど、今の僕は、アメリカという国が嫌いです。
アメリカは、別に変わっていない。
変わったのは、僕のほうなのだ。
僕の憧れていたアメリカは、もう遠い思い出になってしまった。