風の歌が聞こえますか

僕に聞こえてくる風の歌を綴ります。

アラン「幸福論」より

以下引用:

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ほほ笑むことや肩をすくめることは 、思いわずらっていることを遠ざける常套手段である。

病気にかかった人を見たまえ。病気になることによって、自分は病気ではないかという
恐怖から、いかにたちどころにいやされてしまうことか。われわれの敵はいつも想像上
のものなのだ。

憂鬱な人に言いたいことはただ一つ。「遠くをごらんなさい」。憂鬱な人はほとんど
みんな、読みすぎなのだ 。

人間の眼ははるかな水平線をながめる時、やすらぎを得るように出来ている。

強靭な精神をもつ人間は、自分が今どこにいるのか、何が起きてしまったのか、まさ
に何が取り返しのつかないことなのかを自分で考えて、そこから未来に向かって出発
するような人だと、ぼくは考える 。

人にほんとうに与えうるのは、自分のもっている希望だけなのだ。自然を当てにし 、
未来を明るく考え、生命は必ず勝利すると信じなければならない。

われわれはいつも自分の苦痛に対しては耐えうるだけの力がそなわっていることだ。
また、ぜひそうでなければならぬ。

よく聴きたまえ。死者たちは生きようと欲しているのだ。君のなかで生きようと
欲しているのだ。君の生を通して、自分の欲したものがゆたかに展開されること
を望んでいるのである。

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脳科学的には「意志」などというものはほぼないに等しい、とされているようだが、
人間が幸福に生きるためには「意志」という「幻想」なり「仮説」を取り入れて
生きるしかない、というのが今の僕の結論である。

幸福論 (岩波文庫)

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