iPod touchと「i文庫」
夏に買ったiPod touchは長男が見せびらかすので欲しくなって衝動買いしたものだが、
初期不良で交換した後は快調に動いており、結構気に入っている。
予想以上にほとんど使っていないのはネット閲覧、メール、メモ帳機能など。
そうすると、何に使っているかというと:
1)音楽を聴く
お気に入りのCD音源やらiTudnesでダウンロード購入した楽曲やら。
これは普通の使い方だろう。最近は自分のピアノ演奏を録音したものも反省の意味も
込めて入れている。
2)Podcastを聴く
毎朝、CNNとNHK World radioを聴いている。
これは英語の力を落とさないためのもの。加えて最近は別途英語の勉強をしているので
別のヒアリング教材も気が向いたら聴く。蛇足だが、毎日CNNを聴いているといかにアメ
リカ人が自国の事以外に関心がないか、日本がいかに彼らの関心の外にあるかわかって
面白い。
3)単語帳
Googleドキュメントと同期できるフリーソフト「gFlash+」を入れてエクセルで作った
単語帳を入れて見ているが、記憶力の低下の激しさにいささか憂鬱になる。
4)音楽のお勉強
「Circle Theory」というソフトを入れて和声初歩の勉強に使っている。
5)電子書籍
「i文庫」というソフトで青空文庫のデータを入れて読んでいる。
さて、この中で何より最も良かった、と思っているのは電子書籍である。
iPod touchに「i文庫」(\600)というソフトをダウンロードすると、最初から著作権の
切れた本で、青空文庫にアップロードされたデータ151冊分が付いてくる。
この151冊が素晴らしい選択で、芥川龍之介、夏目漱石、太宰治、森鴎外といった文豪
たちの名作はもちろん、それ以外にも最近なかなかお目にかかれない作家の作品も多数
含まれている。これを、通勤電車や出張の移動中にあれこれ読むのが僕のささやかな
楽しみになっている。
ちなみに「i文庫」で読んだ作品を列挙すると:
・国木田独歩「武蔵野」
・芥川龍之介「鼻」「芋粥」
・梶井基次郎「檸檬」「桜の樹の下には」
・田山花袋「蒲団」
・太宰治「桜桃」
・林芙美子「放浪記」
・森鴎外「阿部一族」「舞姫」
・横光利一「琵琶湖」
・高村光太郎「智恵子抄」
など。
それ以外に青空文庫から新たにダウンロードして読んだ本が:
・堀辰雄「クロオデルの「能」」
・夢野久作「戦場」
・永井荷風「男ごゝろ」
・三木清「思索者の日記」
・ビクトル・ユゴー「死刑囚最後の日」
本は読む前に「読もう」というモチベーションがいるわけであるが、「無料ですぐ読
める」ものが大量に手の中にあると、そんなモチベーションとは無縁にふっと気が向
いたらまことに気軽に読書を始めることができる。
どうも気に入らなければ、そっとiPodのメモリの本棚に戻せば良い。
(そういう読みかけの本は沢山ある)。
また過去、一度読んだ本を改めて本棚を探すことなく再読できるのも良い。
それともうひとつ、良かったのはi文庫によって「思いもかけない出会い」が体験できた
ことだ。例えば、林芙美子の「放浪記」とか横光利一の「琵琶湖」など、i文庫がなければ
一生読むことはなかった本だろう、と思う。国木田独歩の「武蔵野」だって以前から興味
は持っていたものの、書店で本を見かけたこともなかったし、i文庫で読めて幸運だった。
他にも「智恵子抄」は教科書などに取り上げられるわずかな部分以外が、これほどまでに
生々しい詩集だったというのが驚きでもあり、納得でもあった。
最後に「i文庫」の使い勝手について触れておく。
最初、iPod touchの大きさでは読みにくいかな?と思っていたけれど、使ってみれば
ちょうど良い大きさで、画面の背景色(いかにも文庫本らしいクリーム色)やフォント
も本そのものを思わせる出来で、違和感はほとんどない。
読みかけの部分で栞をいれることができるようになっており、どこまで読んだかわから
ないということはない。
現時点では大いに満足、特別不便を感じるところはない、というところだろうか。
青空文庫は著作権が消滅した作品を、ボランティアの方々が入力、校正、ファイル作成を
行って維持している無償奉仕活動である。これらの方々のおかげでこれら名作を無償で
読み楽しむことができるわけだ。青空文庫のボランティアの皆様へこの場を借りて篤く
御礼申し上げると共に、今後ますます青空文庫が充実することを一利用者として祈念
申し上げる次第である。