風の歌が聞こえますか

僕に聞こえてくる風の歌を綴ります。

脱出ポッド

寒い夜、寝床に滑り込んだときの一瞬の快楽。
目を閉じて、さあこれから眠りの国に旅立つのだ、というとき、皆さんは何を
思うのだろう?
僕はこういうシーンをよく想像する。

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僕はミイラの棺のようなものの中に寝て宇宙を漂っている。
といっても、これは棺ではない。
時は遠い未来、宇宙船が銀河を自由に航行するようなそんな未来。
宇宙船には不慮の事故に備えて脱出ポッドが備え付けられている。
それは寝た姿勢で一人が入るともう一杯の狭い狭いポッドだ。

ポッドは円筒形で顔の前面がガラスになっていて外が見える。
乗っていた宇宙船に何かが起こり僕は脱出したのだ。
ガラス越しに見える景色は、星々、そして暗黒の宇宙だけ。
これから宇宙をどれだけ彷徨うのか見当もつかない。
いつ助けがくるのかもわからない。
ポッドには自走する能力はないから、ただ漂うだけなのだ。
身動きもできず、広大な宇宙を漂ってゆく。

どこかの星の微弱な引力が、このポッドを捉えるかもしれない。
そうすると、ポッドはゆっくりとその星に引き寄せられてゆくだろう。
その日まで僕は幾千万の星々の光を眺めながら、無音で虚無の空間を
流されてゆく。

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このシーンを寝床の中で思うとき、僕はとても幸せを感じます。
そして、たいていすぐに寝入ってしまうのでした(笑)

# このイメージは、手塚治虫のマンガ「火の鳥」第9巻宇宙編
  のシーンにインスパイアされたものだと思います。
  このお話には、登場人物たちが脱出カプセルに一人ずつ乗って
  宇宙を流されてゆくシーンがあります。