風の歌が聞こえますか

僕に聞こえてくる風の歌を綴ります。

トレンチコート

ずっと着ているお気に入りのアクアスキュータムのコートが、かなり
くたびれてきた。奥さんが気にしていて、新しいのを買えば?としきり
に言う。そうだね、もうそろそろ買い換えようか、でも昔ほどポンド安
じゃないしね、などといいつつ、この冬のうちに買い換えそうな雲行きだ。

このコートは、出張に行ったとき、ロンドンで買った。
どういうルートでどこを回ってロンドンに行ったのかはもう覚えていない
けど、地下鉄ムーアゲート駅の近くの会社のロンドン事務所に行ったら、
たまたま僕より一年先輩の同じ事業部の人と偶然出くわしたのだ。
一人で外国のあちこちで仕事をしたあと、見知った人に会うと安心するし、
嬉しくなる。

その先輩がこう言った。
おい、今は円高で英国のポンドはすごく弱いから、英国ものは今が買い
どきだよ。俺は今からロンドン三越に行くけど、一緒に行かないか、と。
その日、特別な予定もなかった僕は一緒に行くことにした。

先輩がコートを選ぶのを見ているうちに、やっぱり英国の紳士ものはいいな、
僕もコートを買おうかな、という気になった。バーバリーは僕の趣味ではない
ので、そうなるとアクアスキュータムが候補になる。
何着か見せてもらううちに、とても気に入ったものに出くわした。
ステンカラーコートとトレンチコートの中間のような感じのコートだ。
それが今着ているコート。
値段は当時、日本での販売価格の半分程度だったのですごく得をした気に
なった。

デパートを出ると、英国の冬には珍しい快晴の青い空。
子供っぽいけれど、僕もいよいよアクアスを着るんだよな、うむ。と少し
ばかり誇らしい気持ちになった。
僕はブランド物を馬鹿にはしない。
自慢するのは馬鹿だけど、場合によって、人に少しばかりの元気や、少し
ばかりの自信や、少しばかりの勇気をくれる効用があるから。

当分英国に出張に行く予定はないから、こんどのコートは日本で買うしか
ない。値段を調べると当時の価格の3倍弱は払わないといけないようだ。

それでも、やっぱり僕はアクアスキュータムがいい。
いよいよショップで見てこようと思う。