風の歌が聞こえますか

僕に聞こえてくる風の歌を綴ります。

Mood Indigo

1年前、一人の記者がWeb日記を閉じた。
僕はとても残念でたまらなかった。
その記者の名前はGIGOLO氏。
彼の日記を愛読していたのだ。

インターネットのWeb日記。
僕は当時、そういうものの存在すらろくに知らなかった。
それで、好奇心からいくつかの日記を読んでみたのだが、たまたま
立ち寄ったGIGOLO氏の日記「Mood Indigo」はその中でも筆力、内容
で群を抜いていた。彼の書く内容には恋愛についてが殆どだったが、
それは本質を突いていた。そして何より、恋愛という「人と人との
関係性」を通して、彼は自らのコアの部分について深く語っていた
のだ。彼はこう書いていた。
「やはりここネットでは、言葉が命なのだ。
 言葉にはその人の考え方、感じ方、そして生き方が如実に表れる。
 おバカさんや、つまらない人間に、毎日人をひきつける日記は
 書けない。」
と。

もちろん、Web日記の多くが「人と人の関係性」について書いている。
しかしほとんどは、出来事と自分の気持ちの描写に留まり(「逢い
たい」とか「冷たい」とか「気持ちがわからない」etc)そこから
一旦転調して、自分のコアの部分を絡めて普遍的な何かに向かって
文章を展開させている日記は、ごく少ないのだ。

音楽の演奏に自己満足の為の演奏と、人に聴いて貰うための演奏が
あるように、日記にも二種類がある。
Web日記のほとんどは自己満足の為に、自分の心の奥の何かを吐き
捨てるだけのために書かれている。しかし、GIGOLO氏の日記はそれ
らとは一線を画していた。明らかに、人に読まれること、それも、
文章の力で人をひきつけることを目指していた。

僕もまた、以前の日記でも、そしてここでも、事実と気持ちの描写
だけではなく、何らかの普遍性への展開を通して、少しでも読む人
の心をひきつける文章を書けたらいいな、と思っている。
GIGOLO氏の文章が、彼自身のコア(哲学、と言ってもいい)と絡め
て展開される時、僕はしばしば圧倒された。
「僕は残念ながら、この人にはかなわない」と思ったものだった。

なんとなく親近感を覚えさせられる部分もあった。
ユーモアを愛する所。
スポーツカーが好きなところ。
そして、何よりも、どうしようもなく寂しがりなところ。。
一緒に飲んでみたいな、と思わせる人だった。

彼の日記の題名『Mood Indigo』。
なんと格好いい題名だったことか。
ブルーを通り越した藍色の気分。
寂しがり屋にはぴったりの題名だった、と思う。